これまで当科が研究を進めてきた、ヒト末梢血単核球(PBMCs)に山中4因子(Oct3/4、Sox2、Klf4、c-Myc)をセンダイウィルスベクターで導入し、ヒトiPS細胞の樹立を行った。それをサイトカインカクテルと共に培養し、iPS細胞由来樹状細胞(iPSDCs)へ分化誘導した。 このヒトiPSDCsにアデノウィルスベクターを用いてCEA遺伝子を導入し、その腫瘍抗原特異的な抗腫瘍効果をin vitroで確認した。その際にはターゲットとして仮想抗原の他にヒトの癌細胞株を用いて、これらでも同様に腫瘍抗原遺伝子特異的な抗腫瘍効果を確認した。これによりヒトでのiPSDCsを用いた腫瘍抗原遺伝子特異的な癌ワクチン療法の有効性を確認できた。 HLAのタイピングについてはまずはHLA(24,02)の2名で行い上記の結果を得た後、HLA(31、11)でも実験を行ったが、一定の見解は得られなかった。 一方でiPS細胞への腫瘍抗原遺伝子の導入は実現しなかった。当初はプラスミドベクターを用いてエレクトロポレーション法を用いて行っていたが、様々なプラスミドベクターを試したが導入できなかった。腫瘍抗原遺伝子もCEA遺伝子、gp100遺伝子など種類を変えたができなかった。さらに導入法もリポフレクションなど他の方法も試行したができなかった。今後はクリスパー法など新しい方法を検討し、実現を目指していきたい。 これらの成果は2016年4月に大阪市で行われた第116回日本外科学会定期学術集会にて筆頭演者として、2017年3月に仙台市で行われた第16回日本再生医療学会総会にて共同演者として発表した。また癌と化学療法誌Vol. 43に共著者として論文が掲載された。
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