本研究の目的は、地方財政赤字(特に政令指定都市)の原因を解明し、その解決策を提示することであった。しかし、日本の地方財政赤字に関する先行研究は、多くの問題を抱えている。また、政令指定都市の財政赤字に関する研究は乏しい。そこで、本研究は、先行研究の問題を克服しその空隙を埋めるため、計量分析と比較事例分析を組み合わせて、政令指定都市の財政赤字の原因を試みた。 調査方法は、次のとおりであった。①従属変数と独立変数に関する資料を収集し、データを作成、②作成したデータセットに基づき、上記の諸仮説を計量分析によって検証、③政令指定都市の政治行政過程の資料を、実際に現地に赴いて収集、実務家に対するヒアリングも実施、④現地調査を踏まえて、政令指定都市の比較事例分析を実施する。 分析の結果として、「市役所出身の市長であれば、市政に関する行政上・政治上の経験が抱負であり、その行政能力と人脈を生かして、効率的な市政が行うことが可能であるため、地方財政赤字は小さくなる」という「行政能力仮説、「市の財政運営に対する市場圧力が強ければ、効率的市政を行う必要性が出てくるため、地方財政赤字は小さくなる」という「市場規律仮説」が支持された。すなわち、「市役所内部出身の市長が財政規律をもたらす」、「市場公募債が財政規律をもたらす」という結果になった。本研究の社会的意義は、地方財政規律に関して、実務経験に基づく行政手腕の重要性と地方債の市場化の重要性を指摘するということである。
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