本研究は、医療機関を対象とした管理会計システムの導入に関する促進・留意事項を探る研究として企図されたものである。 一般企業を対象とした管理会計手法の導入研究を踏まえ、医療機関レベルでの管理会計システムの導入技法の解明を目的とした。また、医療者に対する意識調査を参照しながら、医療機関内の医療従事者レベルでの経営管理システムの受容に向けた留意事項の解明も目的とした。 平成27年度は、医療機関レベルに焦点を置き、管理会計手法のうちとくに原価計算を中心に研究を進め、アンケート調査並びにインタビュー調査を実施した。アンケート調査はDPC/PDPS病院(1600病院)を対象に約170病院の回答を得て、インタビュー調査では9病院の協力を得て実施した。結果として、原価計算の実施状況・効果認識・促進並びに留意事項について把握し、病院により存立する環境やマネジメントに関する意識の浸透により留意すべき要因が異なること、並びに同一病院でも導入ステージにより留意すべき事項が異なることが明らかになった。 平成28年度は、医療従事者レベルに焦点を置き、経営管理に関する意識について検討し、アンケート調査並びにインタビュー調査を実施した。アンケート調査はあるDPC/PDPS病院(医療従事者約450人)を対象に約400人の回答を得て、インタビュー調査では同病院の10人を対象として実施した。結果として、部門ごとの経営管理に直面した課題の有無により意識が異なるものの、医療サービスに直結するリスク管理に関しては意識が高いことが明らかになった。また、学習機会を得ることが経営管理についての関心そのものを高めることが示唆された。
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