研究課題/領域番号 |
15H06572
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
福嶋 尚子 千葉工業大学, 工学部, 助教 (30756284)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | 中等学校 / 占領期教育改革 / 学校基準法制 / 学校評価 |
研究実績の概要 |
本研究は、学校の「質保証」方策として学校基準の設定・遵守(以下、学校基準政策)と学校評価政策の2つが構想されていたGHQ(General Headquarters)による占領期の教育政策に着目することで、これらの政策の現代の学校の「質保証」方策としての可能性を提示することを目的とする。 平成27年度は、主に占領期初期における中等学校に関する基準政策の①政策過程分析と②政策内容分析を行った。 1947年3月制定の学校教育法は学校設置基準の設定とその遵守により学校で提供される教育の最低限の質を保証する仕組みを採用し、これを受けて、1948年1月に高等学校設置基準が制定された。この高等学校設置基準は、当初は恒久基準と暫定基準の二層構造を内在するものとして提起された。この二層構造は暫定基準の最低基準性を強調し、暫定基準を満たした学校も恒久基準を目指すべきことを求めるものであったが、立案過程において、それらの規定は全て削除された。これにより、高等学校設置基準は学校の「質保証」方策としては重要な、基準の最低基準性や最低基準を踏まえてさらなる高次の水準への「不断の努力」を学校関係者に求める仕組みを欠くものとなった。このことが結果的に、高等学校設置基準の形骸化を招いたものとも考えられる。 こうした高等学校設置基準の立案過程や学校の「質保証」方策の観点から見た特徴についてはこれまでほとんど論じられてこず、占領期の学校基準政策がその後ほとんど機能しなかった理由を推論するものとして意義がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
占領期初期の学校基準政策、特に学校教育法・高等学校設置基準の立案に関わった文部省、CIE(Civil Information and Education Section)、教育刷新委員会、帝国議会等の政策主体について一次資料を分析し、加えて、両法令の複数の草案を比較分析することで、高等学校設置基準についてはほとんど明らかになっていなかった立案過程を明らかにした。また、両法令を、「質保証」方策の観点から、どのような範囲の学校水準(基準の範囲)を、どの程度の高さ(基準の高低)で、またどのような仕組みで達成・維持しようとしていたのか(保障の仕組み及び基準の拘束力)を論じ、その結果、こうした仕組みが立案過程でどのように崩れていったのかまでを明らかにすることができた。 他方で、同時期に、日本において学校評価政策はまだ登場していないことも、一次資料の検討により指摘することができた。 この高等学校設置基準に関する知見は、全国学会誌に論文を投稿し、査読を経て掲載決定の連絡を受けている。 そのため、当初の計画通りに研究を進め、期待以上の成果を得ることができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、占領期後期の学校評価政策に対象を移して、引き続き占領期の中等学校の質保証方策の在り方を解明していきたい。 学校評価政策は、国会や教育刷新委員会などの表舞台ではなく文部省内部において進められていたため、日本側の政策過程の資料のみならずCIEレポートを用いてCIE側からみた文部省の動きを明らかにするのが本研究の手法の特徴である。ただ、占領期後期は、占領の終了を見越したためか、CIE自体の動きが消極的となり、その結果、CIEレポートの量が減ってしまう。その代わりに、『文部時報』等の政府刊行物や『内外教育』等の雑誌が充実してくるので、こうした資料を活用し、政策過程分析を行うこととしたい。 また、政策内容分析にあたっては、占領期後期の学校評価政策が参考資料とした全米中等学校基準研究(the Cooperative Study of Secondary School Standards)との比較により、日本における学校評価政策の特徴を明らかにしていきたい。
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