本研究は、学校の「質保証」方策として学校基準の設定・遵守(以下、学校基準政策)と学校評価政策の2つが構想されていたGHQ(General Headquarters)による占領期の教育政策に着目することで、これらの政策の現代の学校の「質保証」方策としての可能性を提示することを目的とする。 平成28年度は、占領期中期・後期における学校基準・学校評価の両政策の①政策過程分析と②政策内容分析を行い、論文化した。具体的には、対象となった政策は、『新制中学校・新制高等学校 望ましい運営の指針』(文部省学校教育局編、教育問題調査所、1949年)、『中学校・高等学校 管理の手引』(文部省初等中等教育局編、教育問題調査所、1950年)、『中学校・高等学校 学校評価の基準と手引(試案)』(文部省内学校評価基準作成協議会編、実教出版、1951年)である。 この分析により、占領期の学校基準・学校評価政策の特徴として以下の3点が明らかになった。(a)その基準の設定範囲が現代と比較して、より包括的である、(b)学校基準方策は基準の定立のみならずその充足を国の役割として位置づけている、(c)学校評価政策は最低限度の「質保証」を図るのみならず学校のより高次の「質向上」方策として位置づいているということである。 本研究の成果により、占領期学校評価政策の形成過程が初めて包括的・実証的に明らかにされるとともに、それと学校基準政策とが中等学校の「質保証」方策として牽連性をもって当時捉えられていたことが明らかになった。 以上の研究成果は、博士論文「占領期日本における学校評価政策―新制高等学校の水準保障の観点から―」としてまとめ、平成28年12月に東京大学大学院教育学研究科より博士号取得を認められた。
|