研究課題/領域番号 |
15H06574
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研究機関 | 麗澤大学 |
研究代表者 |
上元 亘 麗澤大学, 経済学部, 助教 (50759595)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | 顧客の行動変容要因の多様性 / サービスにおける同調・逸脱 |
研究実績の概要 |
平成27年度は文献レビューを中心とした研究活動を実施する予定であった。既存研究の精査によって、顧客の行動変容という現象と社会学における社会的ジレンマ概念という理論の整合性に問題があることが明らかとなったため、理論の再検討を行った。すると顧客の行動変容は、従業員の顧客に対する直接的な働きかけにより行動を管理することを企図しているサービスマネジメントに関する理論に加え、社会学における同調理論・逸脱理論においても起こり得る可能性が導出された。 本研究者は顧客の行動変容を引き起こす要因の多様性に着目し現象を明らかにすることで大きな理論的貢献を行うことが出来ると判断したため、まずはレビュー論文をこれまでのサービス研究において論じられていない同調理論・逸脱理論の観点から整理することとした。サービスが提供され消費される場であり顧客のサービス経験に決定的な影響を与えるサービス・エンカウンターにおける顧客間の相互作用が行動変容に繋がる可能性を同調理論・逸脱理論の持つ状況依存性に着目してレビュー論文として執筆し発表した(Open Journal of Marketing, 2016.1)。 また、レビュー論文の執筆に平行し、平成28年度に実施する研究の事前調査をリサーチ会社であるアド・ディに委託し行った。同調理論・逸脱理論は集団内における人間同士の相互作用であるため、サービス・エンカウンターにおける顧客相互依存性(他の顧客の重要性)が状況要因として機能することが推測される。6つのサービスにおいてサービス利用者を被験者としてデータ収集を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先述の通り、サービス・エンカウンターにおける顧客の行動変容に関する理論フレームワークを変更したものの、平成27年度はレビュー論文の執筆・発表を行うとともに平成28年度実施する予定の定量的研究の事前調査も実施することができた。理論フレームワークの再検討により新たな理論的課題が導出されたため本研究の目的までの道程が長くなったものの、全体的に本研究課題の進捗は概ね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
まずはサービス・エンカウンターにおける顧客の行動変容の多様性を明らかにするため、自由記述形式での質問票調査を実施する。予想される結果としての多様性は「サービス企業の従業員からの働きかけ」「施設内における掲示や注意書き」「他者の望ましい行動への同調」「他者の規範逸脱行動からの逸脱」といった多くの要因が考えられ、調査によってその多様性のみならず頻度も明らかになる。 その後上記の研究および27年度実施した事前調査をもとにした実証研究を行い、サービス・エンカウンターにおける顧客の行動変容とその規定要因との因果関係を定量的に検証する。 研究を進めるにあたり、9月にミラノで行われるサービス研究の国際学会 "RESER2016"での発表を行い研究の品質を高める。また必要に応じ商業学会関東部会においても学会報告を実施しより大きい理論的貢献を目指す。
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