研究課題/領域番号 |
15H06578
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研究機関 | 亜細亜大学 |
研究代表者 |
大原 俊一郎 亜細亜大学, 法学部, 講師 (00755861)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | 国際システム / 国際協調 / 諸国家体系 / 勢力均衡 / 国際法 / ヨーロッパ古典外交 / ドイツ歴史学派 |
研究実績の概要 |
本研究は、国際政治の一大変革期であり、現在に至る国際システムの基層構造が確定・成熟した近世ヨーロッパ国際秩序に着目することで、「国際システム」「国際協調」「勢力均衡」「国際法」「外交」といった国際政治の基礎概念を再定義し、現代国際政治に偏った国際政治理解を修正する全体構想の一部である。 本研究の実績として、第一に19世紀初頭のウィーン会議に収斂される国際協調の構造的前提を勢力均衡理論の社会化過程に求め、かかる社会化を推進した知識人の政策論、とりわけ国際法思想の発展に着目し、解明を進めた。 第二として、勢力均衡概念の変化が外交のあり方に影響を及ぼし、利己主義的な国益と安全保障の確保という狭い意味での現実主義外交から、現実主義外交の側面を維持しつつも国際秩序の担い手として、協調外交を展開するに至る外交の変革過程、いわゆるヨーロッパ古典外交の形成過程についても解明が進んでいる。 第三として、古典的国際政治論の核心であり、約200年に及ぶ研究と知見の蓄積を有する当研究分野の先行研究を広範囲に渉猟することで、歴史的に成立した国際政治の基礎概念たる「システム」の概念の認識範囲・構造・サブシステム・可能性と限界を明確化し、構造史・思想史・外交史などに分かれる各々の個別研究を「システム」という軸を中心に位置付けることが可能となった。 以上の検討を中心として、最終的には国際システムの基層構造を明らかにし、その成熟プロセスを検証することにより、国際政治の基礎概念の再定義へとつなげ、国際政治の分析枠組みを精緻化するとともに、外交における真の行動規範を明らかにしていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、本研究課題に関するパイロット的な位置付けとなる①「学会発表」と②「論文投稿(審査中)」、加えて従来の研究と本研究課題を架橋するための③「論文発表」を中心に、④「先行研究を渉猟」し、春休みの期間を用いて⑤「一次史料の収集」を予定していた。このうち①~④までは滞りなく完了したが、⑤に関しては、中東からの難民問題の緊迫化とテロの脅威の切迫化を受け延期を決定した。その代替措置として、より発展的な先行研究の収集・渉猟を通じ、国際システム概念の包括的理解の深化、研究方法論の精緻化、研究史・研究動向の明確化などを実行に移すことができた。この代替措置は研究全体構想の進展に大きく寄与しており、全体としてみれば、「おおむね順調に進展している」との評価が妥当と思われる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、先行研究の渉猟の結果として得られた史料情報を元に、夏に渡独・渡英を行い、一次史料の収集に努めるとともに、秋には、当研究分野の研究方法論・研究史・研究動向を総合した学会発表を行い、冬には論文として学会誌に投稿する予定である。 当研究分野は古典的国際政治論の核心を成していると同時に、独・英・仏を中心とした研究の広がりと奥行き、約200年に及ぶ知見の重厚な蓄積そのものが一大学問体系を成している。このため、当初の計画よりも先行研究の渉猟に時間を費やす結果となったが、そのことがかえって従来の国際関係論(IR)、国際政治学(IP)の限界と誤謬を明確化することに寄与し、研究の全体構想を具体化することにつながった。 研究の段階としては、広範囲にわたった先行研究の渉猟も最終段階に入りつつあり、徐々に一次史料の精査を通じた分析の精緻化へと研究の重心をシフトしつつある段階である。 本年度の最終段階においては、本研究課題の締めくくり作業に入ると同時に、具体化された研究の全体構想を元に新たな補助金の獲得につなげていきたいと考えている。
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