研究課題
本研究では,Bifidobacterium bifidumのもつシアリダーゼに着目し,栄養獲得因子としての機能に加え,付着因子としての役割について解析することで,シアリダーゼを介したビフィズス菌の新規な腸管定着機構の解析を行うことを目的とした。平成27年度は,大腸菌を宿主としてB. bifidum由来シアリダーゼ組換えタンパク質として発現・精製し,ELISAによりムチンに対する結合性を評価した。また,B. bifidumのシアリダーゼ遺伝子(sia)を標的として一点相同組換え法により変異株を作製し,ムチンに対する付着性とミルクオリゴ糖の資化性に及ぼす影響を評価した。組換えタンパク質は,ムチンに対して濃度依存的な結合性を示した。一方,酵素活性阻害剤の添加は結合に影響しないことから,1)Neuraminidase domainがムチン結合に関与すること,2)酵素活性は結合性に必須ではなく糖鎖の切断と結合は異なる過程で生じる,と考えられた。次にsia変異株の解析を試みたところ,sia変異株のムチンへの付着性は野生株と比較し有意に(p<0.05)低下した。さらに,ミルクオリゴ糖を糖源として培養を行った場合,野生株と比較しsia変異株の生育に顕著な低下が認められた。以上の結果から,申請者の立案した仮説を概ね証明することができ,さらなる詳細な分子機構の解析を着手するための基礎的知見を得ることが出来た。
1: 当初の計画以上に進展している
当初,時間を要すると考えられたビフィズス菌のシアリダーゼ遺伝子変異株の作出に早い段階で成功したことから,ムチンに対する付着性や糖の資化性など,菌株の表現型の解析まで行うことが出来た。したがって,計画以上の進展と成果が得られた。
ヒト結腸由来粘液分泌型細胞を入手することができたため,動物投与試験の計画を変更し,1)培養細胞を用いた形態学的手法による結合特性の解析,2)糖鎖アレイを用いたシアリダーゼの結合エピトープの解析を行うことで,さらなる研究データの充実を図り,当初の計画以上の成果が得られるよう研究を遂行し学術論文等の公表を積極的に進める。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
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