研究実績の概要 |
1) 胎児期後期におけるhypoxia inducible factor (HIF)を安定させた場合に、血管にどのような影響が影響が出るかを調べた。HIFを安定化する薬剤としてprolyl hydroxyrase (PHD) inhibitorを使用した。妊娠マウスに対し、E 11.5からE 18.5までの8日間に渡り、PHD inhibitor 100mg/kg/dayを妊娠母体に腹腔内注射を行った。出生日(P0)および10週齢でマウスを解析した。脳、心臓、肺、肝臓、腎臓において血管内皮の定量化を行うために血管内皮マーカーであるCD31, VEGFR2, Ti2をrealtime PCRで評価した。いずれの臓器においても、血管内皮マーカーのmRNA発現量は有意な上昇を示しておらず、 臓器における血管密度の上昇は起きていないと考えられた。エリスロポエチン(EPO)発現は変化していた。 2) 早産が臓器発達に与える影響には未知な点が多い。早産児の腎臓においてはネフロン数の低下が起きる事が知られていたが、血管新生への影響は知られていなかった。研究代表者は、早産児として出生した患者のなかに、思春期にEPO高値のために多血症を発症する場合がある事を見出した。早産児はネフロン数減少のため、巣状糸球体硬化症を発症し尿タンパクを呈するようになる。研究代表者は早産児として出生し、思春期に多血症を認め、蛋白尿の原因精査のために腎生検をされた患者2名の生検検体における血管密度評価を行った。血管内皮マーカーCD31およびCD34で免疫染色を行ったところ、満期産児として出生し蛋白尿を呈した患者の組織に比べ、血管内皮要請領域の顕著な低下が認められた。早産児では早産により血管新生が阻害され、組織低酸素からEPO産生が増加し多血症に至ると考えた。本研究は胎児期の血管新生が重要であることを示唆している。
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