我々は糖尿病による網膜神経障害のモデルとしてdb/dbマウスを用い、16週齢でscotopic ERGおよびphotopic ERGの振幅低下がみられ、8週齢から16週齢までの8週間、トレッドミルによる運動を行うことで、非運動群と比較して有意にERGの振幅が維持されることを前年度に確認した。今年度はそのメカニズムの解析を中心に行った。 血糖値および血中インスリン濃度は運動群と非運動群で変化は見られなかった。しかし網膜組織のAktが運動群では活性化しており、インスリン抵抗性の改善が視機能に影響したと考えた。次にインスリンシグナル(プロインスリン、インスリンレセプター、Irs2、GULT4)についての解析を行ったが、こちらは有意な変化は見られなかった。またインスリン抵抗性の改善に伴う糖の取り込みの促進に着目し、解糖系の酵素(ヘキソキナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ)の測定を行ったが、有意な変化が見られず、いまだインスリン抵抗性の改善と網膜神経保護の関係に関しては検討中である。 また16週齢のdb/dbマウスに同様の運動をさせると、4週間後にはコントロール群と同程度まで網膜電図の改善が見られた。また8週齢から8週間の運動の後、運動負荷が無い通常飼育環境に戻しても、少なくとも4週間は網膜電図が低下せず、運動効果が持続していたことも確認した。 また電子顕微鏡で詳細な神経変化の観察をこころみたところ、非運動群において視神経のミトコンドリアに変化を認めた。現在解析中であり、近日中に論文として報告する予定である。
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