研究課題/領域番号 |
15H06599
|
研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
東條 弘子 順天堂大学, 国際教養学部, 助教 (00756405)
|
研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
|
キーワード | 協働学習 / 教室談話分析 / 英語授業 / アクション・リサーチ / 質的分析 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、大学における英語授業で協働学習が実施される際の、教室談話の様相を捉えることである。小集団学習時に、学生間で生起した対話のあり方を時系列に沿って分析し検討する。このことにより、協働的な対話の特徴を捉え、学生間で学習内容の理解がどのように促進されるのかを明らかにする。 具体的には、内容重視の英語授業において3~4人のグループ内で交わされたやりとりの特徴を当該学生の英作文課題における記述内容をふまえ捉える。研究代表者が2015年度後期に担当した大学1年生を対象とする授業映像と音声記録から、教室談話録を作成し、誰が誰に対してどのような内容について話すのかを明らかにする。例えば、学生が 1,000 語の英作文課題に着手する際には、どのような疑問を抱き、どのような難しさを仲間に訴えるのか。仲間はどのような支援を施し、切磋琢磨して共通の課題を成し遂げるのか。自らの不確かな理解のあり方を尋ねていた学生が、仲間から助言を得て、最終的には的確な表現を用いて英作文を記すようになる過程を検討する。 小集団学習では、グループ構成員によってやりとりの傾向や内容が異なる。3つのグループで生起した教室談話の様相を比較した結果、共通点と相違点が見出された。共通点は、2つのグループにおいて学生同士が安心して自分の疑問やわからないところを尋ね合う、協働的な対話が成立していたことである。学習内容について相互に尋ね合う中で、思考を深める様相が見られた。残る1グループでは、仲間の英作文を読み読者として感じたことを、指摘し合い改善する協働的な対話が成立していた。文章を洗練させるための支援が学生間で施され、互恵的な理解構築がなされていた。 以上のように、本研究では英語授業における協働的な対話の特徴が捉えられ、学生個人の認知変容過程のあり方を明らかにできることから、授業実践者ならびに研究者に示唆を与え得る。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2015年度後期に実施した授業談話録を概ね作成できたことから、2016年度も引き続き実際の教室談話を録音・録画し、可能な限り文字プロトコルとして記すことを企図している。学習者個人の認知変容過程を、どのような分析概念を用いて分析し検討するかについては、既存の研究知見をふまえ、再考する必要がある。前期授業が終了した時点で談話録作成に着手する。教室談話における全体的な傾向を捉えるとともに、2015年度後期に見出した協働的な対話の特徴が、今期にも共通するのかを慎重に見極める予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
2016年度前期に実施する授業における録画・録音のために、研究代表者が担当する英語授業における研究参加者としての学生全員から調査同意書を得る必要がある。同意書を全学生から入手した段階で、教室談話録の作成に努める。発話量の分析には、年間の教室談話録が作成された時点で着手する。質的な分析についても、年間の教室談話録の様相を包括的に捉え、手がけることとする。2016年度後期に実施する授業においても、録画・録音を予定しているが、前期分のデータ分析を優先させる予定である。
|