本研究の目的は、大学英語科における授業実践過程を継時的に捉え、学習者間での協働的な対話の特徴と機能を明らかにすることである。 本研究では、2015年6月~2016年1月まで都内私立大学で著者により実施された、英語 Writing 授業における教室談話の様相を、事例として取り上げ検討した。主として、学生3名で編成される小集団学習時の対話のあり方を横断的に比較した結果、3グループ間における共通点と相違点が見出された。以下は、その一例である。 第一グループと第二グループでは、Writing 課題実施過程中の疑問点や不安が「わからない」という発話と共に頻出し、仲間との間で自らの「わからなさ」を共有した上で、課題遂行を試みる協働的な対話が見られた。「わからない」という発話が、学習内容の理解構築過程における「足場かけ」として機能しており、自らの「わからなさ」を安心して仲間に訴えることが、新たな知識構築を志向する際の萌芽として解釈された。最終的には、thesis statement のあり方、ならびに Introduction の書き方についての理解が仲間相互間で促され、等しく水平的なやりとりが捉えられ、グループを超えた共通点とみなされた。 一方、第三グループでは、3名の学生各自が Writing 課題の読み手となり、相互間で批評を重ねる対話を生成していた。互いに課題作文を読み合う折に、「ここは、こういうふうに書いた方がよりわかりやすい」というように、学習者個々人が既存の知識を活用した上で、相互に作品の内容を改善し合う様相が見られた。第一・第二グループと比較した際に、必ずしも学習内容に対する理解が進んでいる構成員ではなかったが、相互間での主体的なやりとりが捉えられ、第三グループの対話における特徴と解釈された。 いずれの対話も、互恵的な学習過程に見られる協働的な対話として機能している。
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