本年度は、"密度ー距離順応"の基本的な空間特性として、まず大きさ順応現象との相違を検討した。従来の大きさ順応現象は刺激単体の大きさに対して生起すると考えられているが、個々のドットが形成する全体的な順応刺激サイズ(順応エリアのサイズ)に対しても生起する可能性がある。この全体的刺激サイズがドット間の知覚距離またはテスト刺激の知覚的大きさを縮小させるのではないか、という指摘に対して追加の実験的検討を行った。実験は元の実験で用いた順応刺激と同時に黒い枠を呈示するものだった。実験の結果、枠があるにもかかわらず、高密度刺激に順応するとドット間の距離やテスト刺激の知覚サイズが縮小することが明らかになった。この効果は低密度順応後にはみられなかった。この結果を踏まえ、本研究の成果を国際誌へ論文として投稿中である。 また順応効果の奥行き選択性を検討するため、2つのモニター画像をそれぞれの眼に入力する両眼分離呈示装置(ハプロスコープ)の構築を行った。
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