研究課題/領域番号 |
15H06616
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研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
井上 浩子 大東文化大学, 法学部, 講師 (20758479)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | 国家構築 / 政治文化 / 法文化 / 東ティモール / 正当性 / 近代化 / 伝統 / 平和 |
研究実績の概要 |
本研究は、国連暫定統治の下ではじまった東ティモールにおける国家構築の過程を、リベラル・デモクラティックな国家制度と伝統的な共同体に根差した社会秩序との相克という観点から考察することを目的とする。研究プロジェクト初年度である2015年度は特にその理論面での補強を図り、非西洋世界における国家構築に関する理論研究、実証研究の読み込みを行ってきた。 二年目につづく研究成果として挙げられるのは、以下の二点である。第一に、現代の国家構築・平和構築における研究の方法論的問題点を指摘し、それによって本研究で採用する方法論の基礎を築いたことである。現代の国家構築・平和構築研究は、多くの場合、特定の社会のあり方を善とする、規範的な視点を含んでいた。本研究では、こうした規範的予断を配することで、東ティモールにおける国家構築がどのように展開したのかを、実証的に考察することを目指す。第二に、非西洋世界における近代国家構築の研究を、東ティモールの事例と照らし合わせながら考察することで、国家構築がどのように展開するのかに関わるいくつかの主要な要因を(現段階では仮説であるが)提示できるようになったことである。これには、環境的要因、産業化・近代化の度合いによる国家制度へのアクセサビリティーのほか、東ティモール社会で共有されてきた統治の正当性に関する理解などが含まれ、これが相互に絡み合っている。2016年度は、これらの方法論と理論における研究の進展をもとにモノグラフの執筆を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目標は、東ティモールの国家構築の展開を考察し、これをモノグラフとして出版することにある。出版に関わっては、パルグレイブ・マクミラン社(イギリス)から出版されている「平和と紛争研究を再考するRethinking Peace and Conflict Studies」シリーズからの一部としての出版を目指しているが、初年度は方法論・理論面での考察を行っていたため、出版に関わる事務的な作業がやや遅れている。当該出版社との連絡を密にし、2016年度の早期に出版契約を行いたい考えである。またそのためには、出版物全体の骨格をより明示的に提示できるようにする必要があるため、今後は方法・理論とともに東ティモールの実証研究について補強を行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度には、方法論面、理論面での研究を進めることができたので、2016年度の研究はこれをもとにした単著の出版を行う。 第一に、現在執筆中のブック・プロポーザルを、夏休み前に完成させ、サンプルの数章とともに出版社に提出する。この際には、社会科学の専門的な英語についてコメント、補強をお願いできる専門の英語話者の助力を得る。 第二に、夏休みを中心に、本の執筆を行う。この際には、あらかじめアドバイスをお願しているオーストラリア国立大学の教授らと連絡を密にし、アドバイスをいただく。必要であれば東ティモールもしくはオーストラリアへの出張を行い、資料の補足を行う。 第三に、パルグレイブ・マクミラン社のシリーズ編集を行っている先生と連絡を取り合い、書籍の校正のほか、出版までのアドバイスをいただきながら、出版作業をすすめる。
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