本研究での目的は、これまで個別事例の分析になりがちであった、買い物弱者対策事業の効果を定量的かつ横断的な観点から把握する事である。 平成28年度はまず、関東地方・中部地方の市区町村を対象に、食料品の消費支出額を推定する重回帰モデルの構築を行った。各市区町村における買い物弱者対策事業の実施状況に加え、各地域の地域特性として、人口や高齢化率,過疎地域の該当の有無や、食料品店の分布についてもGIS等を用いて指標化し、説明変数の候補とした。また、過疎地域・高齢化率が特に高い地域については、それぞれの該当結果と対策事業を組み合わせた変数も作成した。重回帰分析の結果、地域特性を考慮したうえでも出前・出張商店街などの出張的な販売事業を行っている場合、人々の食料品の支出額が大きくなりやすく,買い物が行われやすくなるという結果が得られた。 また、本年度は買い物弱者対策事業の実施が人々の主観的な評価に及ぼす影響についても検討を行った。具体的には「日常の買い物環境の利便性」に対する主観的評価を推定する決定木モデルを作成した。回答者の徒歩圏・自動車圏の店舗数・集積数やその業種多様性などの客観的状況を考慮して、回答者の居住する市区町村における各種の買い物弱者対策事業の実施の有無が与える影響をみた。結果として、徒歩圏内にある商業集積の業種多様性は低いものの,商業集積外のものまで含めた全店舗数や業種多様性が一定値を超える地域では移動販売を行っていたり,多くの事業を行う市区町村に居住している方が買い物環境が高評価になりやすい,という結果が得られた。 これらの定量分析から、「人々のより身近において店舗や品物の購入場所・機会を増やす」施策が一定の効果を持つことが示唆されている。なお、これらの研究成果の各部分を論文としてとりまとめる事にも着手しており、2017年春の日本地理学会学術大会地理学会などで発表を行った。
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