研究実績の概要 |
亜硝酸(NO2-)はあらゆる窒素異化反応によって生成/消費されることから窒素循環の中心に位置する物質であるが、その重要性にもかかわらず、ほとんど挙動が明らかになっていない。本研究の対象地としたスギ人工林では、斜面内の上部から下部にかけて、NO2-生成速度、NO2-消費速度及びNO2-消費経路が異なることが、本研究代表者らのこれまでの研究によって明らかになっている。NO2-の生成・消費速度および消費経路の制御メカニズムを明らかにするために、当該年度において、含水率を変化させた長期(約3ヶ月)の室内培養実験を行なった。斜面上・中・下部を代表する3種の土壌を調整し、各土壌を斜面上・中・下を模した重量含水率(それぞれ20%、32.5%、45%)に調整して、25℃にて培養し、培養1, 22, 43, 63, 84日目に無機態窒素濃度の測定と15NO2-添加実験を行った。 培養期間中のNO2-生成速度の変化から、斜面上下での硝化活性の違いは含水率によって制御される、という仮説を支持する結果を得た。一方で、斜面中部・下部のNO2-動態の違いについては、含水率以外の要素が支配的であることが示唆された。土壌呼吸速度は斜面下部より中部で高く、従属栄養微生物の活性の差が斜面中部と下部でのNO2-動態の差を生みだす可能性が示唆され、現在解析を進めている。オートクレーブ土を用いた実験から、NO2-生成活性の変化は微生物性の変化によることが支持されたが、土壌からのDNA抽出法の検討に想定以上の時間を要したことから、硝化微生物群の変遷についての実験については未着手である。申請時に想定していなかった研究代表者の産休等により、H27年度に実施予定であった長期培養をH28年度に行なったため、発表及び論文化が遅れているが、今夏までに実験を終え、年度内に論文としての情報公開に至るよう、実験と解析を進める所存である。
|