研究課題/領域番号 |
15H06623
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
宮川 麻紀 帝京大学, 文学部, 講師 (60757079)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | 交易 / 交通 / 開発 / 日本古代史 / 地域史 |
研究実績の概要 |
本年度は、日本古代国家を支えた流通経済が形成されていく過程を明らかにするため、ヤマト王権による交易・物資輸送ルートの開発がどのように行われたのか考察した。 具体的には、王権の中枢があった大和(現在の奈良県)に近い近江国野洲郡(現在の滋賀県守山市)を事例に、調査・研究を進めた。その結果、近江国野洲郡の一帯が、朝鮮半島から渡ってきた渡来系氏族の先進的な知識や技術を利用して開発され、水上交通と陸上交通との結節点として物資輸送の重要拠点であったことを示すことができた。また、そうした地域的特徴がその後の時代にも活かされ、律令国家形成に必要不可欠な評家(のちの郡家)といった地方行政機関が置かれるに至ったことも解明することができた。この研究成果は、近刊の加藤謙吉・佐藤信・倉本一宏編『日本古代の地域と交流』に論文として掲載予定である。 また、西国に置いた支配拠点の事例として、筑前国の観世音寺領把伎野(現在の福岡県朝倉市)を中心に現地踏査を行った。この地域は、7世紀に王宮が置かれるなど、王権との関わりが密接な場所である。これまでも、豊後(現在の大分県)につながる陸上交通や、筑後川の水上交通の結節点として注目してきたが、今回の調査ではさらに福岡県八女市の八女古墳群や熊本県へと続いていく交通の要衝であったことも確認できた。 以上のように、各地域において7世紀までにヤマト王権が行った開発の様相を明らかにすることで、律令国家の成立という日本史上の一大画期がどのようにして起こりえたのか提示することができた。今後は、他地域の検討も行うとともに、東アジア諸国との比較検討もしていく計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は交付内定が決定してからの期間が短かったが、調査・研究成果を近刊の論文集に掲載予定であり、十分に成果を出すことができたと考えている。また、次の課題である福岡県朝倉市の現地踏査も行うことができた。次年度も研究成果を公表できるように努力していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画にしたがって、備前国の大安寺領荘園(岡山県岡山市)や美濃国の茜部荘(岐阜県岐阜市)の研究を進めていく計画である。また、東アジア諸国との比較研究を行うため、韓国での調査も計画しているが、これについては日本国内での地域史研究の進捗状況によって、計画を変更する場合もある。
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