目的:状況認識プロセスの思考表出の効果、及び知覚や認識に与える影響を検証するため、実践の起点となる視覚からの情報取得(注視)と、環境整備の必要性の判断(選択)に与える影響を明らかにする。 背景:生活環境を整える看護は、安全・安楽の観点から看護の必要性を判断し実践に至る。しかし、環境整備の機会の多さ、評価や指標、対策の不足から、重要性を認識していながら、起点となる情報が取得されず、実践に至らない場合がある。 方法: 看護師61名を実験課題に対する状況認識プロセスの思考を表出する群と表出しない群に分け、実験を行った。測定には視線計測装置とタッチパネルを用い、注視と環境項目の選択を指標とした。 結果: 環境整備場面における思考表出が注視と選択に与える影響は、優先度の高い環境整備項目に対して、①選択項目数の増加、②注視して選択する項目数が多い、③注視しないで選択する項目数が変化しない、④注視しないかつ選択しない項目数が変化しない、であった。 結論: 思考表出は、優先度の高い環境整備項目に対して、注視し選択するということを促した。これは対象物に意識を向け、注視した上で適切な対象物を選択するということであり、実践の起点となる情報を的確に取得し、必要性を判断するという効果が検証できた。 この研究では、看護師が看護実践場面における状況認識プロセスの思考表出を行うことにより、その後の的確な情報取得と判断につなげることの可能性を示す。
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