研究課題/領域番号 |
15H06630
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研究機関 | 東京経済大学 |
研究代表者 |
村上 祐紀 東京経済大学, 経営学部, その他 (20758239)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | 日本近代文学 / 森鴎外 / ドイツ / 19世紀末 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、主に鴎外の受容した国内外の19世紀末の知的ネットワークの整理を目的とし、おもに文献の発掘・分析を進めた。初年度にあたる本年度は、先行研究が明らかにしてきた鴎外の蔵書を手がかりに、以下に挙げる二つのテーマに細分化し調査を進めていった。 第一に、鴎外のドイツ留学時代、また帰国後も継続して受容していたドイツにおける情報ネットワークの基礎的調査をおこなった。方法としては、まず『独逸日記』や『椋鳥通信』をもとに、鴎外が受容したドイツの歴史家、ジャーナリストたちの整理を行い、その文献の入手・分析を行った。その結果、鴎外の帰国後の動向と似た経歴を持つ、歴史家、ジャーナリストたちの存在に辿り着いた。この成果については、論文にまとめる準備を進めている。 次に、ドイツでの文献調査と併行させるかたちで、日本における19世紀末の好古家たちのネットワークに関して資料調査を進めた。特に本年度は集古会の活動に焦点を当て、調査を行った。特に集古会の人々が携わった雑誌『集古』『同方会報告』『武蔵野』、名家の墓の保存を目的とした『見ぬ世の友』『あふひ』、古跡の調査・保存を目指した『古蹟』などに見られる「人」「事」「物」に関する研究を調査することによって、その学問的な特徴を明らかにした。本研究は、鴎外の歴史叙述の方法が①江戸時代以降の伝統的な学問体系②ドイツ由来の近代歴史学双方からの影響によって形成されたものであるという見通しのもと進めているが、①に関する関係性を今回の調査で見出すことができた。この点については今後も調査を続行する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度として、『独逸日記』『椋鳥通信』を元に、鴎外が受容した歴史学者、ジャーナリストたちの整理を行い、その文献蒐集・整理し、書誌的事項について精査することに注力したが、予定していた通りに調査を終えることができた。さらに、調査を進めていく中で、当初分析対象に入れていなかった複数の歴史家の存在が明らかとなった。こうした発見は、鴎外とある特定の人物との影響関係を超えた、19世紀末に存在していたであろう情報ネットワークの一端を考察する基盤となったと考えられる。 今後は蒐集した文献の分析が必要になってくるが、このように今後の基盤を獲得できた点でも順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究における二つの観点、①集古会を中心とした江戸時代以降の伝統的な学問体系とその明治期における受容②ドイツの歴史家、ジャーナリストたちの情報のあり方と鴎外における受容、については、それぞれの調査・分析が進んでいるため、これらの成果をひとまずまとめた上で、さらに、①②を総合的に捉える考察へと展開させていく予定である。関連作品としては『舞姫』『うたかたの記』『椋鳥通信』『かのやうに』などがあげられるが、あくまでも本研究は鴎外の業績を総体的に捉える視点を提出することを目的とするため、知的ネットワークを形成する試みとして作品を横断的に評価することを目指す。
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