研究課題
昨年度,OPVのドナー/アクセプター界面である,sexithiophene (6T)/PC61BM界面の電子構造を紫外光電子分光(UPS)とX線光電子分光(XPS)で測定し,X線回折(XRD)・原子間力顕微鏡(AFM)で界面形成の様子を明らかにした.透明電極であるインジウムスズ酸化物(ITO)基板のPC61BMスピンコート膜の秩序構造を加熱処理で制御した.PC61BM薄膜を160度で加熱することで,既報の文献通りにPC61BMが結晶化したことを面内・面外XRDで確認した.また,加熱していないPC61BM膜上では,表面が平滑な6Tのドメインが形成されるが,加熱後のPC61BM膜の上では凹凸のあるドメインが観察される.PC61BM(加熱無し)/6T界面のUPSスペクトルでは,6Tを4.5層分蒸着しても6Tの明確なHOMOピークが出現しない.一方,PC61BM(加熱有り)/6T界面では,おおよそ単層の6Tを蒸着すると6T由来の光電子ピークが明確に観測される.前者の界面に対するXPS測定から,PC61BMのO 1sピークが6Tの蒸着量に対して指数関数的には減衰しないため,PC61BMと6Tの混合か,6Tの島状成長が示唆される.また,界面形成に伴い,PC61BMの加熱処理に関わらず,単調に仕事関数が低下し,6Tの電子準位が高束縛エネルギー側にシフトすることも分かった.これは,PC61BM/6T界面で熱力学平衡を達成するために,6T層の電子がフェルミディラック分布に従って占有されるため,HOMOから電子が引き抜かれ,正のポテンシャルが6T層に形成されたためである.なお,基礎的な検討として,HOPG/F16ZnPc/6T界面のUPS/XPS測定も行い,F16ZnPc/6T界面では極めて複雑な電子準位接続が観測された.
3: やや遅れている
HOPG/F16ZnPc/6T界面で観測された非単調な真空準位シフトをITO/PC61BM(加熱無し)/6T界面でも期待していたが,観測されなかった.研究計画にある下地有機層の結晶性の違いによる界面電子構造・界面構造の違いは明らかにできたが,構造解析が十分でなく,例えば,PCBM膜上での6Tの分子配向や,F16ZnPc/6T界面における構造の詳細は分かっていない.そのため,研究計画通りに円滑に研究が進んでいるとは言い難い.
アニール前後のPC61BM膜の表面分子配向・表面エネルギーの変化や,6Tを蒸着したヘテロ構造のXRDを検討し,界面形成の詳細を調べる予定である.F16ZnPc/6T界面については,共同研究により,超高真空STMを用いた界面構造の詳細な検討を行うことになった.また,既に太陽電池作製・評価装置は立ち上げており,今後はPC61BM/6T界面を用いたOPVデバイスの評価を行い,界面電子構造との関連を探って行く予定である.関連して,来年度はOPV関連の界面における電子準位接続とキャリアダイナミクスを,過渡光起電力法などを用いて,詳細に関連付ける予定である.
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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