研究課題/領域番号 |
15H06638
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
津山 崇 東邦大学, 薬学部, 助教 (70436096)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | DNA複製 / Cdt1 / 複製フォーク / アフリカツメガエル卵抽出液 / ゲノム安定性維持機構 / 再複製 |
研究実績の概要 |
本研究では、再複製の回避・修復に関与するゲノム安定性維持経路の同定およびCdt1によるゲノム安定化作用との連携について分子レベルより解析することを目標とする。我々はこれまでにCdt1が再複製の際にDNA複製を抑止することでゲノム安定性維持に寄与している可能性を示す結果を得ている。そこで、Cdt1によるDNA複製抑制作用の詳細な分子的機序についての知見を得るため、アフリカツメガエル卵抽出液に過剰量のCdt1を添加したときの新生鎖伸長反応をアルカリアガロースゲル電気泳動法により調べた。CDKインヒビターであるp27を添加した卵抽出液に、DNAポリメラーゼ阻害剤であるアフィディコリンで処理したクロマチンを添加することで、再複製の開始が起こらない条件下でDNA鎖伸長反応を再開させた。このとき過剰量のCdt1を添加することにより、新生鎖伸長反応の顕著な抑制が観察された。これはCdt1による新生鎖伸長反応の阻害が再複製の開始に非依存的に起こることを示している。また、Cdt1がRPAのクロマチン結合に与える影響について調べたところ、アフィディコリンによって誘導されるRPAのクロマチン上への蓄積がCdt1によって抑制されることを見出した。この結果は、Cdt1が複製フォークの進行を阻害することで新生鎖伸長反応を抑制することを示唆している。さらに、複製フォークの停止に関わるCdt1の機能領域の同定を目指して、種々のCdt1変異体を作製し、新生鎖伸長反応に対する影響を調べた。その結果、N末端側1-254アミノ酸領域およびC末端側606-620アミノ酸領域は複製フォークの停止に必須の役割を果たしていないことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、再複製の回避・修復に関与するゲノム安定性維持経路の同定およびCdt1による複製フォーク停止機構との連携について解明していくことを目的とし、培養細胞を用いた遺伝学的・細胞生物学的解析と、生化学的解析を密接に組み合わせながら研究を進展させることを計画している。現在のところ、Cdt1の機能についての生化学的解析を中心的に進めている。種々のCdt1変異体タンパク質が得られており、複製フォークの停止に関与するCdt1の機能領域の同定に向けた解析を順調に進めている。培養細胞を用いた解析については、ニワトリDT40細胞においてCdt1誘導発現株の樹立に向けた検討を進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
再複製誘発時に機能するゲノム安定性維持経路を特定し、その機能を理解することに重点を置く予定である。種々の遺伝子を破壊したニワトリDT40細胞にCdt1を強制発現し、再複製を誘発させたときの細胞の動態についての詳細な解析をおこなう。また、再複製誘発時にゲノム安定性維持に重要な役割を果たすことが示唆されたタンパク質について、アフリカツメガエル卵抽出液を用いた生化学的解析を実施し、その機能の詳細について明らかとすることを目指す。さらに、ゲノム編集技術によりヒト細胞の遺伝子操作をおこない、より詳細な細胞生物学的解析を進める。
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