研究課題
本研究は、脊椎動物に普遍的に備わる造血幹細胞の自己複製・分化の制御機構を系統発生学的アプローチにより解明することを目的とする。即ち、魚類造血幹細胞の活性化前後における遺伝子発現プロファイルと哺乳類造血幹細胞におけるそれとを比較し、造血幹細胞の自己複製制御候補因子を同定し、それらの機能を解明することで造血幹細胞の体外増幅法の開発を目指すものである。本年度は、魚類造血抑制による造血幹細胞活性化の誘導法の開発、並びに造血活性の定量法の確立に注力した。哺乳類で骨髄抑制を引き起こすことが知られる細胞周期特異的抗がん剤5-fluorouracil (5-FU)をクローン系統の存在するギンブナに投与したところ、主な造血部位である腎臓において血球数の顕著な減少が認められた。一定量以上の5-FUを投与された群では、白血球数減少に伴う易感染性に起因した死亡魚が観察されたものの、生存個体は造血が回復し長期に亘り生存した。これらの結果は、5-FU投与により造血前駆細胞の死滅、それに伴う成熟血球の枯渇、さらに造血幹細胞の活性化による造血回復という一連の現象が再現されたものと示唆された。また、5-FU投与魚における造血活性を継時的に定量するため、造血前駆細胞のin vitroコロニーアッセイ系の開発を試みた。既に同定済みであった各種魚類造血因子の組換え蛋白質を作製し、半固形培地を用いて魚類腎臓細胞のコロニーアッセイを行ったところ、魚類における赤血球、栓球、好中球の前駆細胞を定量可能な実験系の確立に成功した。本成果は、今後の魚類造血機構解明研究に向けて重要な技術基盤を築くことができたと考えている。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Developmental and Comparative Immunology
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