研究課題/領域番号 |
15H06647
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
浦田 健太郎 日本大学, 歯学部, ポスト・ドクトラル・フェロー (60754398)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | 痛覚過敏 / TRPA1 / 炎症 / IL-6 |
研究実績の概要 |
口腔粘膜を損傷した際に発症する機械的な痛覚過敏の発症機序の解明を目的として、TRPチャネルに着目して研究をすすめており、すでに自身が口腔粘膜損傷後の痛覚過敏との関連を明らかにしたTRPA1の発現制御機構について、損傷部より遊出されると考えられるIL-6との関連について実験を行っている。平成27年度は以下研究計画に基づき良好な研究結果を得た。①口腔粘膜損傷モデルラットの作成:これまでの報告に従う。②本モデルの機械的痛覚過敏発症の経日変化では、疼痛反射閾値を計測したところ切開処置後5日目まで機械的痛覚過敏の発症を確認した。③頬粘膜切開部組織の組織学的変化の解析では、HE染色により確認したところ、切開処置後3日目まで顕著な炎症性所見を認めた。④頬粘膜切開部組織のLPSおよびIL-6量の継時的変化では、痛覚過敏の発症が確認されている切開処置後1日目および3日目においてELISA法によりタンパク量の変化を計測したところ、LPSは無処置群と比較して有意な差を認めなかったが、IL-6では未処置群と比較して切開処置群において増加する傾向を認めた。⑤切開部組織を支配する三叉神経節細胞におけるTRPA1の発現変化解析では、未処置群と比較して切開処置後1日目3日目において有意な増加を認めた。 上記①から⑤で得られた結果は申請書に記した仮説から逸脱しておらず、頬粘膜切開後に機械的痛覚過敏を発症すると、切開部組織に炎症が生じ、また切開部組織中にIL-6の遊出が起きるとともに、切開部を支配する三叉神経節にはTRPA1の増加が認められることが明らかとなった。これらの結果はTRPA1関連機構を解明する上で必要な情報と考えられる。今年度はTRPA1とIL-6との関連についてアンタゴニストを用いた行動薬理学的解析を中心に免疫組織化学的解析の追加実験を行うことで仮説の立証を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
摘出した切開部組織中の各ターゲットの免疫組織学的解析において、特にIL-6のタンパク定量の正確なデータの検出に時間を要し、H27年度に予定されていた頬粘膜切開部へのアンタゴニスト投与による実験を完了できなかったため上記区分とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、頬粘膜切開性機械痛覚過敏の発症におけるTRPA1とIL-6との関連を立証するため、これまでの研究結果より得た切開処置後の痛覚過敏発症の経日変化と免疫組織学的解析の結果をもとに、IL-6アンタゴニストおよびIL-6のシグナルトランスデューサーであるGp130のアンタゴニスト持続投与下での行動薬理学実験とTRPA1とIL-6を関連させた免疫組織学的解析により、機械的痛覚過敏が発症している頬粘膜切開部下流のメカニズムを検索する。
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