研究課題
クラミジアによる慢性感染症は骨盤内炎症性疾患や粥状動脈硬化症などの原因となることが示唆されている。本菌慢性感染の原因の一つと考えられるのがaberrant body(AB)への移行である。クラミジアはペニシリン等の抗菌剤投与や炎症促進性サイトカインであるIFN-γの曝露等様々な環境ストレスによって感染能と増殖能を欠失したABへと変化することが知られている。ABは長期間宿主細胞内で生存できると考えられているが、通常のクラミジアと同様にリソソームによる消化を回避できるのか等、宿主細胞内での挙動については不明な点が多い。本研究ではクラミジア慢性感染症に対する新たな治療法や予防法を確立するため、細胞内におけるABの動態を明らかにすることを目標とした。これまでにペニシリン誘導性のABが感染する細胞では通常のクラミジア感染細胞に比べてリソソームマーカーであるLAMP1の発現量が増加することや、感染96時間後の生存性はIFN-γ誘導性ABまたは通常のクラミジアに比べてペニシリン誘導性ABの方が低い傾向にあることを明らかにしてきた。これらの原因を探るべく、膜へ移行すると推定されるクラミジアIII型分泌装置のエフェクター蛋白質として35個の蛋白質をソフトウェアEffectiveT3によって選出し、それらの遺伝子発現量を解析した結果、CT228、CT232、CT365、CT849は通常のクラミジアやIFN-γ誘導性ABよりペニシリン誘導性ABで発現量が低下または上昇することがわかった。この結果から、CT228、CT232、CT365、CT849がリソソーム消化を防ぐのに何らかの役割を果たしており、ペニシリン誘導性ABではこれらの蛋白質の発現が変化するために、通常クラミジアやIFN-γ誘導性ABに比べて細胞内の生存性が低下する可能性が考えられた。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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American journal of veterinary research
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International journal of systematic and evolutionary microbiology
巻: 67 ページ: 3660-3665
10.1099/ijsem.0.002204