研究実績の概要 |
上顎インプラント治療において、高度に顎堤吸収した患者では、犬歯窩周囲にインプラントを傾斜埋入する方法が応用されることがあるが、この部位は鼻腔と上顎洞があり骨形態が不規則であることから、術前に骨形態および歯槽管の位置を十分に把握することは、安全なインプラント治療を行うためにも重要である。本研究では、パノラマと歯科用コーンビームCT(以下CBCT)の関連における犬歯窩部領域の骨形態および歯槽管の局在パターンについて検討した。 方法は、解剖献体31体(62側)を、パノラマおよびCBCT装置により、上顎骨全体の撮影をした。犬歯・小臼歯部欠損グループと同歯残存グループに分け、パノラマ画像より、上顎内側壁と鼻腔外縁との関係を4つに分類した。CBCT画像では、画像上で前鼻棘が確認できるスライスを前鼻棘レベルとして高さの基準とし、前鼻棘レベルから上方10sliceごとの範囲のスライス画像(スライス厚0.155mm)計6スライス(ANSレベル、ANS+10sliceレベル~ANS+50slice)を計測の対象とした。犬歯窩部の近遠心的距離は、前鼻棘および梨状口外縁から上顎洞前端の距離を測定した。また、各レベルにおいて、近遠心的距離4分割内での歯槽管の有無および面積の割合について検討した。 結果は、犬歯・小臼歯部の有無による近遠心的距離および歯槽管の位置の比較で、大きな差はなかった。近遠心的距離は、どの骨形態でも上方に行くにつれて値は小さくなったが、ANS+40slice, +50sliceレベルになるとやや大きくなる傾向を認める形態もあった。歯槽管の位置は、上方に行くにつれて上顎洞前端方向に歯槽管が認められ、形態によっては近遠心的距離に対して、どのレベルでも約50%前後の面積の割合を示す形態があった。インプラント治療を行う際、骨形態もインプラントの太さや長さを決める要因になると考えられた。
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