本研究では,小型魚類であるメダカの配偶選択における嗜好性の獲得について検討を行うことで,性的嗜好性の形成について明らかにすることを目的とした。 28年度は,27年度の実験を引き続き行い,体色の異なる2系統のオスのメダカを用いて,成長過程における周囲の環境によって性的な嗜好性が変化するか検討を行った。実験に用いた2系統のメダカは主に体色のみが異なり,配偶相手として自系統の個体を強く好む。この2系統のオスのメダカを1)自系統のオスのみで飼育,2)2系統混合でオスのみで飼育,3)孵化後から自系統のメスと飼育,4)孵化後から異系統のメスと飼育,5)オス1個体を単独飼育の5条件で飼育を行い,性成熟後の配偶者選択における嗜好性を観察した。その結果,オスの性的嗜好性は飼育環境によって変化するが,自系統をより好む傾向が見られ,性的嗜好性の獲得には学習によって後天的に得られる要因と生得的な要因とが影響している可能性が示唆された。 また,(a)2系統を別々に飼育後に混合で飼育,(b)混合飼育での飼育後に系統別,の2条件で飼育を行い,各飼育条件の期間を操作することで,メダカの性的嗜好性が形成される時期について検討を行った。その結果,性成熟するまでの約12週間の期間において,わずか2週間のみでも異系統との混合飼育期間が存在すると,配偶選択時の性的嗜好性に変化が生じることが確認された。しかしこの結果については,飼育環境の統制,系統間の差異といった問題点が残されているため,更なる実験が必要であると考えている。
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