研究課題/領域番号 |
15H06685
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
宇都 伸之 早稲田大学, 政治経済学術院, 助手 (30755963)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | 実験経済学 / アイトラッカー / リスク下の意思決定 |
研究実績の概要 |
【研究目的】実験経済学において,実験被験者に支払う金銭報酬額と実験で獲得した利得を比例させることを,インセンティブの付与という.近年,実験参加者の視線をアイトラッカーによって測定する手法が実験経済学に取り入られている.しかし,インセンティブの付与と視線運動との関係を検証した研究はない.本研究課題の目的は,インセンティブの付与と視線運動の関係を明らかにすることである. 【研究の概要】2015年度は,インセンティブの付与と経済行動との関係についての先行研究を調べるとともに,実験を行った.アイトラッカーを用いた経済実験で特に精力的に研究がされている,リスク下の意思決定実験を行い,被験者の視線運動を測定した.同じ意思決定課題を,①インセンティブ有り条件,②インセンティブ無し条件で行った.120名程度の実験を行い,分析に耐えうる良好な視線データを蓄積することができた.実験で蓄積された視線データから,視線の滞留時間,複数の情報間の視線移動パターンに関するデータを生成した.そして,これらのデータを基に,インセンティブの付与が視線運動にどのような影響を与えているかを分析した. 【結果】2015年度に行った分析は,傾向を把握する程度の簡単な分析であったが,極めて興味深い傾向を発見することができた.まず,インセンティブの付与によって,視線の滞留時間が変化する傾向が見られた.このことから,意思決定においてインセンティブは何らかの認知負荷を与えていることが予想される.次に,ある特徴を持った意思決定課題において,視線移動パターンに条件間の差が見られた.このことから,インセンティブの付与によって情報の取得パターン,さらには意思決定プロセスが変化しうるということが示唆される.2016年度はより精密に以上の傾向を検証していく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り,実験を行うことができた.また,コンピュータの性能向上により,データの処理速度が飛躍的に向上した.この結果,早い段階で結果の概要を把握することができた.また,海外の著名な研究者から,研究計画および研究結果について有益なコメントを得ることができた.このことから本研究課題は順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
2015年度の研究活動で得られた結果をより精緻に分析する予定である.この分析結果を基に論文を作成する.また,2015年度の実験結果から一つの仮説が生じたので,この仮説の検証をするために実験を行う予定である.
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