研究課題/領域番号 |
15H06688
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
植田 啓嗣 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 助手 (60757326)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | タイの教育 / 教育政策 / 比較教育 / 教育行政学 / 教育の機会均等 / 少数民族教育 / 小規模学校 |
研究実績の概要 |
本研究は、タイにおける地域間の教育機会・教育環境の格差の構造および要因を経済状況との関連から明らかにし、タイ教育省が施行する学校教育に関する諸政策および各学校が実施する独自の教育実践が子どもたちの教育機会・条件格差の改善にいかに貢献しているかを検証することを目的とする。本研究では、とくに教育機会や教育環境が不十分な状況にある、①小学校に併設された中学校、②小規模な小学校、③少数民族の教育に特化した学校に焦点を当てる。 平成27年度の研究では、「小規模な小学校」と「少数民族の教育に特化した学校」に関するフィールドワーク調査を実施した。 「小規模な小学校」の現状を明らかにするために、チェンマイ県内の小規模小学校を数校訪問するのに加えて、比較対象として大規模小学校2校を訪問し、教員あるいは校長に対してインタビュー調査を実施した。また、教育省基礎教育委員会事務局とチェンマイ第1初等教育地区事務所にも訪問し、担当職員から話を聞いた。小規模小学校存続の要因としては、通学距離の問題、地域・学校・寺院のつながりの問題(一村一寺院一学校の理念)がある。タイでは児童数に応じて国から各学校に補助金が配分されるので、小規模小学校では教育条件を整えるのが難しい現状がある。一方で、大規模小学校は政府の補助金に加えて、保護者・卒業生・地域の有力者からの寄付金が多く集まるため、ますます小規模学校との教育条件の格差が生まれている。 「少数民族の教育に特化した学校」に関しては、チェンマイ・スクサーソンクロー学校を訪問し、教員や児童生徒にインタビュー調査およびアンケート調査を実施した。児童生徒、教員ともに「貧困脱却(より良い現金収入を得られること)」を意識し、教育活動に取り組んでいることがわかった。この学校では職業教育に力を入れており、少数民族の子どもたちがタイ社会で生きていくための知識や技術を習得している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度はフィールドワークを2回実施し、ほぼ計画通りに研究を遂行できている。また、フィールドワークへの協力校も当初の予定よりも多く確保することができた。しかし、チェンマイ県とバンコク都の2地域での調査しかしていないので、来年度はもう一つ地域(東北部コンケン県の予定)を増やし、地域間の比較対照を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、「小学校に併設された中学校」の実態調査を進めるとともに、「小規模な小学校」と「少数民族の教育に特化した学校」に関しての調査を深めていく。 「小規模な小学校」に関しては、おもにチェンマイ第1教育地区をフィールドとして、複数の小規模学校の教員・児童生徒に対しインタビュー調査、アンケート調査を実施したり、学力テストの成績や設備面の学校間比較を通して、小規模校の問題の現状を明らかにする。 「少数民族の教育に特化した学校」に関しては、タイ北部の山岳地帯の少数民族の村にある学校(通学制)を数校訪問し、全寮制である町の学校との取り組みの違いや教育成果の違いを検討する。この研究により、タイにおける山岳少数民族の学校教育の全体像や課題や明らかになる。
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