研究実績の概要 |
真核細胞において、ゲノムDNAは四種類のヒストンからなるヒストン八量体の周囲に巻き付いてヌクレオソーム構造を形成し、コンパクトに折り畳まれた状態で核内に収納されている。ヌクレオソームは、クロマチン結合因子と結合することにより、さらに高次のクロマチン基盤構造を形成する。本研究では、ヌクレオソームとクロマチン結合因子が形成するクロマチン高次基盤構造を明らかにすることを目的としている。 本課題申請時は、新規リンカーヒストンタンパク質HP1BP3に着目し、HP1BP3が形成するクロマチン高次基盤構造の解明を目指していた。しかし、HP1BP3タンパク質の性状が悪く、構造解析に必要な量をリコンビナントタンパク質として大腸菌から高純度に精製することが困難であった。そこで、生物種をヒトから分裂酵母に変更することとした。分裂酵母は、単細胞生物でありながら、クロマチン構造やその制御機構の多くがヒトをはじめとする高等真核生物との間で高度に保存されている。しかし、これまでに分裂酵母ヌクレオソームの試験管内再構成に成功した例は報告されていなかった。そこでまず、分裂酵母の4種類のコアヒストンをそれぞれリコンビナントタンパク質として高純度に精製した。精製したヒストンとDNAを高塩濃度条件下で混合し、塩透析法により分裂酵母ヌクレオソームを試験管内で再構成することに成功した (Koyama et al., 2107)。また、分裂酵母におけるHP1BP3の機能性ホモログを選定し、リコンビナントタンパク質として高純度かつ大量に精製した。さらに、精製した分裂酵母のHP1BP3機能性ホモログタンパク質がヌクレオソームに結合することをゲルシフト法により確認した。今後、精製した複合体を用いて立体構造解析を行う予定である。
|