本研究の目的は、第二言語の文法の習得において学習間隔がどのように影響するかを明らかにすることであった。それと同時に、第二言語学習者の個人差要因(適性)がどのように学習効果に影響を与えるかを調べた。日本人母語話者を、短期間復習群(3日間隔で練習を4回)と長期間復習群(7日間隔で練習を4回)に分けて、スペイン語をベースにした自然人工言語の現在進行形の活用の練習をさせた。練習方法としては、活用形の規則を明示的に提示しながら、絵やビデオなどを見て動作を描写したり、様々なタスクを用いて、文法知識の自動化を促した。事後テストとして、原形を与えて、正しい活用形に直させる課題と絵を見せて、描写をできるだけ早く行ってもらう課題を行い、正確さと発話速度を測定した。また、複数の外国語学習の適性テストを受けてもらった。本研究で明らかになったことは、以下の3点である。(1) 新しい文法項目を学習する間隔は、1週間空けるよりも3日から4日程度空ける方が効果的である。(2)適性と学習効果の関係を探った結果、練習間隔が短い方が文法規則の自動化を促進する可能性が示唆された。(3)練習間隔を1週間空けてしまうと、言語分析能力と記憶能力の個人差の影響が強く出るが、練習間隔が短いと個人差の影響を減らせることができることが示唆された。これらの結果から、文法の繰り返し練習における練習間隔を調整することで、基礎的な文法項目の定着の効率化が測れることを示した。限られた学習時間を使って、練習間隔のみを変えるだけで、学習の効果を上げることができることを示した点で本研究の成果は重要だと考えられる。
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