研究課題
歯周病感染領域における治療は、歯周外科治療や抜歯などの外科処置が主であり、口腔内の血管や歯槽骨喪失に対する内科的アプローチはほとんど行われていない。カカオ豆抽出物は、Streptococcus mutans の産生するグルコシルトランスフェラーゼを阻害して細菌の付着性を減少することや Porphyromonas gingivalis (P. g)のコラゲナーゼ活性を抑制することから、歯周組織を健全に保つ作用があると考えられる。そこで、2種類のカカオ豆抽出物(Cacao Bean Polyphenol Extract (CBP)およびHPカカオエキスPW-VE-R(PW-VE-R))の歯周病原細菌であるP. g ATCC 33277に対する抗菌効果について検討を行った。その結果、カカオ豆抽出物であるCBPおよびPW-VE-RのどちらにもP. g に対する抗菌効果が認められたが、PW-VE-R と比較してCBPの方が強い効果を有していた。また、カカオ豆抽出物作用後のバイオフィルム形成した菌体をLIVE/DEAD染色することによりその効果を有することを確認した。さらに、カカオ豆抽出物は、活性酸素種であるスーパーオキシドの消去能を有することがERS分析によって明らかとなった。スーパーオキシド消去能についても抗菌効果と同様に、PW-VE-Rに比べCBPの方が増大していた。
2: おおむね順調に進展している
本研究費採択から約半年ということもあり、当初計画していたin vivo での検討結果はまだ得られていないが、カカオ豆抽出物の歯周病原細菌に対する抗菌効果および、活性酸素消去能についての結果が得られている。
今後は、カカオ豆抽出物を用いて歯周病原細菌のヒト歯肉上皮細胞への付着阻害作用と破骨細胞分化誘導能の抑制効果の検討を行う。また、マウスに歯周病原細菌である P. g を感染させ、歯周病モデルマウスを作製しカカオ豆抽出物投与した後、P. g 感染後の歯肉微小循環への影響をレーザードップラー法にて解析する。更に、P. g感染により歯周病の進行を確認するため骨吸収量および歯肉血管反応を経時的に測定し、歯槽骨破壊と歯肉微小循環破壊の関連性について解析する。これらの結果を考慮し、カカオ豆投与による歯槽骨および歯肉微小循環の効果を評価する。なお得られた研究成果は、学会発表および論文にて速やかに報告する予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
日本歯科評論
巻: 75 ページ: 143-146
Journal of Clinical Biochemistry and Nutrition
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