歯周病感染領域における治療は、歯周外科治療や抜歯などの外科処置が主であり、口腔内の血管や歯槽骨喪失に対する内科的アプローチはほとんど行われていない。カカオ豆抽出物は、Streptococcus mutans の産生するグルコシルトランスフェラーゼを阻害して細菌の付着性を減少することや Porphyromonas gingivalis (P. g )のコラゲナーゼ活性を抑制することから、歯周組織を健全に保つ作用があると考えられる。そこで、2種類のカカオ豆抽出物(Cacao Bean Polyphenol Extract (CBP)およびHPカカオエキスPW-VE-R(PW-VE-R))の歯周病原細菌であるP. g ATCC 33277に対する抗菌効果について検討を行った。その結果、カカオ豆抽出物であるCBPおよびPW-VE-RのどちらにもP. g に対する抗菌効果が認められたが、PW-VE-R と比較してCBPの方が強い効果を有していた。また、カカオ豆抽出物作用後のバイオフィルム形成した菌体をLIVE/DEAD染色することによりその効果を有することを確認した。さらに、カカオ豆抽出物は、活性酸素種であるスーパーオキシドの消去能を有することがERS分析によって明らかとなった。スーパーオキシド消去能についても抗菌効果と同様に、PW-VE-Rに比べCBPの方が増大していた。また実験的歯周炎において、P. g感染後にカカオ豆抽出物を投与した群は、骨吸収量の抑制が認められた。
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