シリコンフォトニクスやMEMSと呼ばれる半導体微細加工技術を利用した集積バイオセンサの研究開発は近年より一層進展しており,医療および健康管理市場への寄与が期待されている.本研究では,金属アシスト型スロット導波路を基軸として,従来のものより高感度な集積バイオセンサを創製することを目的としている.提案した光導波路は下部クラッド領域に金属層を有するという特徴をもつ.また,プラズモニック導波路ではほとんど利用されてこなかったTEモードを用いる.これにより,基板方向への光の染み出しが抑えられ,解析対象物が存在する上部クラッドに光が集中し,屈折率変動に敏感な導波路構造を実現できる.平成28年度の研究では,金属アシスト型スロット導波路の上部にアセチレンガスを充填した場合のセンサ感度の評価を行った.2次元ベクトル有限要素法を用いた解析により,ガス充填領域における光閉じ込め係数は最大で85%となることを明らかにした.これは従来の金属層を用いないスロット導波路より2.5倍ほど大きい値である.このとき,センサ感度は1000nm/RIUを超えることを示した.また,特定の構造パラメータにおいてセンサ感度が著しく低下することを見出し,その原因はTEモードとTMモードの結合であることを突き止めた.実用的には,このようなセンサ感度の劣化が激しい構造は避けるべきであると考えられる.本研究の最終フェーズでは,金属アシスト型スロット導波路に基づくリング共振器の解析を3次元ベクトル有限要素法を用いて行い,2次元解析により得られたセンサ感度の結果とよく一致していることを示した.
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