研究課題
歯科領域における術後感染症は、外科的無菌技法の進歩や抗菌薬の開発の結果、外因性感染による発症は減少したが、患者自身の持つ常在菌などによる内因性感染による発症は依然として存在する。特に口腔・咽頭領域では、外毒素を産生するグラム陽性菌と内毒素を産生するグラム陰性菌など毒性を有する日和見菌が多数常在しているため、内因性感染による術後感染症の発症が懸念される。したがって、周術期における口腔・咽頭部における細菌叢の制御は必要不可欠であり、プロバイオティクスの適応がその一助となることが期待される。これまでの研究でヒト口腔内から採取したプロバイオティクス候補菌Lactobacillus crispatus LBS17-11が、肺炎球菌であるStreptococcus pneumoniae ATCC 49619に対して抗菌活性を持つことがわかっている。本年度は、Lactobacillus crispatus LBS17-11が他の肺炎球菌Streptococcus pneumoniae GTC 261あるいは他の日和見菌であるインフルエンザ菌に対しても同様に抗菌活性を有するかを検証し、さらにその抗菌活性物質について調べることを目的とした。拮抗試験(Competition assay)および抗菌活性試験(Radial diffusion assay) を行った結果、Lactobacillus crispatus LBS17-11は、Streptococcus pneumoniae ATCC 49619、Streptococcus pneumoniae GTC 261、Haemophilus influenzae ATCC 9795およびHaemophilus influenzae GTC 15014に対して抗菌性を示すことがわかった。さらに、次の工程である抗菌活性物質を同定するための準備としてLactobacillus crispatus LBS17-11の上清からタンパク質またはポリペプチドの抽出を準備中である。
3: やや遅れている
現在までに、プロバイオティクス候補菌Lactobacillus crispatus LBS17-11の日和見菌Streptococcus pneumoniae ATCC 49619、Streptococcus pneumoniae GTC 261、Haemophilus influenzae ATCC 9795およびHaemophilus influenzae GTC 15014に対する抗菌性を確認した。しかしこれらの日和見菌の一部は、Biosafety level 2であるため手続きが多少煩雑であることに加え、各菌種の納期にばらつきがあったこと、さらに各菌の培養方法の確立に時間を費やしたため、抗菌活性物質を同定することに関してやや遅れている状況にある。
平成28年度は、プロバイオティクス候補菌Lactobacillus crispatus LBS17-11の上清より抗菌活性物質を抽出し、その本体がタンパク質であるかポリペプチドであるか同定する予定である。同定した物質のStreptococcus pneumoniae ATCC 49619、Streptococcus pneumoniae GTC 261、Haemophilus influenzae ATCC 9795およびHaemophilus influenzae GTC 15014への抗菌効果を確認する。その本体がタンパク質またはポリペプチドであればアミノ酸配列順序を決定する。その後、データベースよりこの本体が新規物質か既知物質かを検索する。さらに、Lactobacillus crispatus LBS17-11の術後感染予防の可能性について検討する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
日本歯科麻酔学会雑誌
巻: 4 ページ: 26-28
International Journal of Oral and Craniofacial Science
巻: 2 ページ: 30-34