研究課題/領域番号 |
15H06702
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研究機関 | 金沢学院大学 |
研究代表者 |
工藤 義信 金沢学院大学, 文学部, 講師 (70757674)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | 詩人の社会階層 / 教訓文学の汎用性 / 中英語文学の社会的拡がり |
研究実績の概要 |
本研究は、15世紀イングランドの教訓文学の性質と、その隆盛を支えていた社会層への理解を深めるための一例として、Peter Idleyとその著書Instructions to his Sonを社会史・文学史の双方の観点から調査し、新たな知見を得ることを目的とする。初期の報告として、Peter IdleyおよびInstructions to his Sonについて、これまで分かっていることと主要な問題点とをまとめ、平成27年12月の日本中世英語英文学会のポスター報告部門で報告を行い、関連分野の研究者と有意義な情報交換を行うことができた。平成28年2月から3月にかけて、ロンドン公文書館が所蔵するPeter Idleyの伝記に関わる約30点の史料を閲覧調査し、また英国主要都市の図書館に点在するInstructions to his Sonの15世紀当時の写本を閲覧調査した。その後はこれらの資料のうち、まずIdleyの伝記に関わる史料の分析を進めており、Peter Idleyの伝記を論じた2つの先行研究を、史料に照らして批判的に検討し、Idleyの職務経歴を明らかにする研究を進めている。この基礎的な分析をもとに、15世紀イングランドの英語による教訓文学を支えた社会階層についてPeter Idleyの一例が示唆することを考察し、その成果を、平成28年6月の西洋中世学会で報告する予定が決まっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ロンドン公文書館及び英国3都市の図書館所蔵の原資料調査を予定通り実施することによって、本研究の基礎的な分析材料となる史料・写本のデータを収集することができた。史料データの解読・分析に多くの時間を要してはいるものの、史料分析以外の調査も含め、良好なペースで進められており、研究成果をじきに発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
27年度の計画では、Peter Idleyの伝記的事実を再検証したのちは、Idleyと関係の深い人物群を手掛かりに、生前のIdleyを取り巻いていた書物や文学作品を明らかにすることを予定していたが、この課題は当初想定していたよりも大掛かりな調査が必要となることがわかり、実行意義・方法・実行可能性について再度検討することにした。一方で、Instructions to his Sonとその材源との関係についての基礎的な分析が未だ十分に行われているといえないため、今後は先述の課題に代えて、先にテクストと材源の比較研究を進めていく方針である。
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