昨年度は、ランニング障害の原因と考えられている支持期中の後足部外反モーメント(後足部を外反させる力)の発生要因を接地パターン別に検証した。その結果、後足部接地と後足部接地以外のランナーでモーメントの発生要因に違いが見られた。後足部接地のランナーでは、接地直後には床反力の側方成分(Fml)が、その後は足関節中心と足圧中心の側方距離(ank_cop)がモーメントの主な発生要因となっていた一方で、後足部接地以外のランナーでは、接地直後にはank_copが、その後はank_copとFmlが(ただし、主にank_copが)モーメントの発生要因になっていた。これらの結果から、接地パターンによって後足部外反モーメントの発生要因は異なるものの、ank_copはいずれの接地パターンにおいても、モーメントを発生させる主な要因になっていることが明らかとなった。 今年度はさらに、このank_copを実験室以外の環境で簡易的に測定するために、可搬性に富む足圧分布測定器とビデオカメラによるank_copの計測システムを構築し、その精度検証を行った。ank_copのデータを得るには、空間座標系にある足関節中心位置座標を、足圧分布測定器上の座標系に移し、足関節中心位置と足圧中心位置を同座標系内で捉える必要がある。そのため、精度検証では、構築した計測システムにおける2つの座標系の一致度を検証した。その結果、誤差は最大でも7.8mmであった。しかし、昨年度得られたデータでは、約15mm程度の範囲に被検者26名のank_copのデータが存在していたことから、本計測システムでは、個々のank_copの値を識別する精度まではないと判断された。よって、今後は座標系を一致させる手法を再考する、もしくは、座標系を一致させる手法以外でank_copを得る方法を確立する必要性があると考えられる。
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