今年度は、前年度に引き続き、少年雑誌に遺された書き入れに関する調査を日本近代文学館および神奈川近代文学館において行った。結果として、雑誌の記事に共感を示すような書き入れのみならず、年長の読者が青少年にその雑誌をすすめたり、あるいは読ませたくない記事を指定したりなど、雑誌の読み方を変容させるような書き入れも見出された。さらに、時に記事の語句を細かく添削したり、記事の内容を辛辣に批判したりなど、雑誌に掲載される投稿文には表出しにくい寸評も見られた。 これらの成果は前年度調査分と併せ、成果を日本児童文学学会にて発表し、論文「明治期の少年雑誌と読者たち―『少年園』『小国民』の書き入れをめぐって―」(『仁愛大学研究紀要人間生活学部篇』8)にまとめた。 また、日記に関する調査として、亀岡市文化資料館、防衛庁防衛研究所史料閲覧室、東書文庫にて史料調査を行った。結果として、これまでの研究では明治30年代以降の日記指導については言及されてきたが、実際は明治20年代以降、とりわけ日清戦争を契機として日記指導が学校において行われるようになってきており、日記が人格形成の手段として、また家庭と学校ひいては子どもと国家をつなぐものとして浸透してきた過程などが明らかになった。 さらに、明治20年代に高等小学校の生徒によって書かれ、教員に添削を受けた日記を史料として用いることで、日記指導の実態についても明らかにした。 以上の日記に関する成果はシンポジウム「近代日本の日記文化と自己表象」において報告したのち、助言等を踏まえて論文集へ投稿した。
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