本年度の研究においては、①戦後農村青年学習運動の実践分析、②学習運動の担い手のその後(全国各地の「風土舎」運動、信濃生産大学など)に関する追跡調査とその分析、③現代の農村青年を対象とする地域学習の組織化に取り組んだ。その成果として、下記の諸点について明らかにすることができたのではないかと考える。 1)農村地域内の分断化が進んでいる今日において、地域の協同を編み直す「風土」を生かしたむらづくりの視点は重要なキー概念となりうる。地域とは「自然・文化により歴史性を内在させた空間」に他ならないが、その地域的規定性を地域固有の生産・生活の営為へと結びつける知恵を我が物にしていく地域学習が重要であった。 2)都市部から農村へと移住をし、地域づくりに取り組む若者たちの間には「人間らしく、まともな労働・生活(decent work & life)を希求する潜在的ニーズ」があったように思われる。そのような若者たち自身が自らのニーズを省察し、新たな地域づくり実践へと具体的に踏み出してしていくための試みとして「地域づくり学習会」を組織することが出来た。 3)農村に生きる若者たちが、自らの地域を支える主権者意識を我が物にしていくためには、地域づくり実践への具体的な参加が保障されることが重要であった。そのように若者の地域づくりへの参加を保障し、地域の諸矛盾を解決していくプロセスを通して学ぶ地域学習の拠点としての「地域に根ざした大学」のあり方についても検討をすることができた。
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