本研究は、立法裁量に対する裁判所による司法的統制という問題について、裁判所による実行可能で、かつ人権保障に資する新たなアプローチを構築するという見地から、「準手続審査」に関する議論を展開させるという目的の下で行われてきた。 最終年度にあたる平成28年度は、研究計画書に沿って、まず「議会の自浄機能」の問題に関する検討を行った。従来から議会による法形成の「手続面」について、その瑕疵が生じた場合に裁判所は議会-主として各院-の行為について敬譲的な姿勢を採ってきた。そこには、法形成の手続面で議会の判断を裁判所が尊重する立場をとる際の根拠として、議会(各院)が自らその過誤を是正(手続的瑕疵を治癒)することができるという一種の自浄機能というものが措定されてきたといえる。こうした問題を踏まえ、裁判所による敬譲の根拠として存在していた法形成過程における手続的瑕疵の問題は議会自ら管理することができるという「議会の自浄機能」が現実に作動しているのかについて考察を行った。その結果、議会における手続的諸準則の実施メカニズムが存在することが直ちにその実施に結び付くわけではないこと、実際には多くの場面でそのメカニズムが機能していない(議会が機能させていない)こと(=可謬性)を結論として指摘した。なお、この研究成果については『朝日法学論集』に投稿予定である。 次に、これまでの研究の中で得られた結果をわが国の判例法理の下で如何に連結させていくのかという実践的な意義を持つ研究を進めてきた。それは、準手続審査がいかなる領域に、どのような根拠や条件で適用されるかを示すことは、今後の同審査手法を展開させていくうえで極めて重要であると考えられるからである。本研究については現在進行形であり、その成果についてはこれまでの研究とともに書籍化による公表を考えている。
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