研究課題
本研究の目的は、治療法未確立の疾患である糖尿病性多発神経障害(DPN)の新規発症機序の解明である。インスリン分泌促進作用のあるスルフォニルウレア(SU)薬は臨床現場で汎用されているが、近年、本薬の標的であるグルコース応答性KATPチャネル(KATPC)が中枢神経系にも広く分布し、エネルギー代謝状態に応じた神経興奮性の制御、摂食行動の変化および全身の代謝状態変化に寄与することが解明されつつある。そこで本研究では、KATPCの末梢神経系における生理学的役割を評価し、KATPCに作用する臨床薬剤SU薬(KATPC opener)およびnicorandil(KATPC closer)のDPNの病態に及ぼす影響を検討することにより、DPNの新たな発症機序と治療法の確立を目指した。平成27年度の研究成果を以下に記す。(1)マウス後根神経節及び坐骨神経における各種KATPC構成タンパクが発現していることを確認した。また、streptozotocin誘発1型糖尿病モデルマウスにおけるKATPCタンパクの発現量には変化がないことを確認した。(2)マウス後根神経節ニューロン初代培養において各種SU薬が神経突起伸長を抑制し、nicorandilが伸長を促進することを示した。(3)KATPCノックアウトマウスにおいて神経伝導速度・知覚機能検査などを用い、末梢神経機能の低下を確認した。以上より、KATPCの末梢神経系における生理的役割を解明しつつある。
2: おおむね順調に進展している
当初計画では平成27年度において、KATPC欠損マウスにおける末梢神経系の機能および病理学的変化までを検証する予定であった。末梢神経系の機能については詳らかとなったが、病理学的変化については十分な検討が得られていない。しかしながら、その他の予定していた実験についてはおおむね予想通りの結果を得られ、順調に進展しており、総合的に判断するとおおむね順調であると考えられる。
まず、昨年度計画の残りであるKATPC欠損マウスにおける末梢神経系の病理学的変化について検証する。次に、当初研究計画に基づき、1型糖尿病モデルマウスにおけるDPNに対するKATPC作動薬による治療効果を検討する。すなわち、streptozotocin誘発糖尿病モデルマウスのDPNに対し、KATPC openerおよびcloserの影響を評価する。
すべて 2016
すべて 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)