研究課題
本研究は、糖尿病性多発神経障害(DPN)の新規発症機序の解明を目的とした。インスリン分泌促進作用のあるスルフォニルウレア(SU)薬の標的であるグルコース応答性KATPチャネル(KATPC)が中枢神経系にも広く分布し、エネルギー代謝状態に応じた神経興奮性の制御、摂食行動の変化および全身の代謝状態変化に寄与することにヒントを得、KATPCの末梢神経系における生理学的役割を評価した。その結果、マウス後根神経節及び坐骨神経における各種KATPC構成タンパク発現を確認した。また、streptozotocin誘発糖尿病モデルマウスおよび肥満2型糖尿病モデルdb/dbマウスにおけるKATPCタンパクの発現量を比較し、糖尿病状態でのKATPCの発現に変化を認めないことが判明した。次に、マウス後根神経節ニューロンの初代培養細胞を用いて、各種KATPC作動薬の末梢神経系細胞に及ぼす影響を評価したところ、各種のSU薬は、各々のチャネル選択性に依存して、神経保護作用あるいは逆に神経傷害作用を発揮することが明らかとなった。また、KATPCの開口薬は、神経保護作用を発揮することが示された。最後に、KATPCノックアウトマウスにおける末梢神経系の機能及び病理学的変化を評価したところ、いったん正常に発達した末梢神経系が、加齢に伴い野生型マウスよりも早期に末梢神経機能が低下することが明らかとなった。以上より、KATPCは末梢神経系の維持に重要な役割を果たすことが証明された。今後、KATPCノックアウトマウスの末梢神経系の病理学的評価と細胞生物学的評価を行い、KATPCの末梢神経系の恒常性維持に果たす役割を詳細に解明する。より頑健性の高い方法論として現在、末梢神経系特異的KATPCノックアウトマウスを作成中である。また、DPNの新規治療薬として、KATPC開口薬のDPNマウスに対する治療効果も検討する。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Diabetes Investigations
巻: 8 ページ: 29-31
10.1111/jdi.12527
http://www.aichi-med-u.ac.jp/su06/su0607/su060703/06.html