研究課題
本研究ではGタンパク共役型脂質受容体の消化管炎症の調整における役割を明確化することを目的に検討を行った。ターゲットとしては前年度で効果が認められたGPR35およびGPR40とし、そのメカニズムを含めた詳細について検討を加えた。GPR35は炎症性腸疾患(クローン病および潰瘍性大腸炎)患者においてその遺伝子変異が発症のリスクファクターであり、その作用の欠如が病態に関与している可能性が強く示されている。しかしながら、GPR35の炎症性腸疾患における基礎的な検討は十分に報告されていない。研究代表者は、正常消化管上皮細胞株(YAMC、IEC-6)を用いて、GPR35の活性化が創傷治癒を促進することを既に確認していたが、その作用はGiタンパクのカップリング亢進、cAMP産生低下、フィブロネクチンおよびインテグリンα5産生増加、およびERK活性化を介することを新たに見出した。加えて、GPR35活性化が炎症性腸疾患モデルであるDSS誘起マウス大腸炎の発症を抑制することも見出した。一方で、GPR40は消化管粘膜再生作用を有するGLP-2の産生を促進する受容体であることが報告されている。研究代表者はGPR40活性化がDSS誘起マウス大腸炎の発症を抑制することを既に確認していたが、その作用が大腸粘膜での局所的な内因性GLP-2分泌の増加作用を介することを見出した。さらに、DSS誘起大腸炎の治癒モデルを新たに作製し、GPR40の治癒過程における役割を検討した結果、GPR40活性化は発症だけでなく治療効果も併せ持つことを見出した。研究代表者が示した新しい知見は、炎症性腸疾患の新たなる治療標的を示唆するものであり、創薬の観点からは非常に有用であると考えられる。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics
巻: 360(1) ページ: 192-200
10.1124/jpet.116.235580