研究課題/領域番号 |
15H06732
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研究機関 | 同志社女子大学 |
研究代表者 |
續田 尚美 同志社女子大学, 看護学部, 助手 (60756211)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | 歩行リズム / α / 掛け声 |
研究実績の概要 |
本研究では、ヒトの最も基本的な活動である“歩行”の安定性を高める方法として自らの掛け声に着目し、歩行の安定化につながる方策を得ることを目的としている。平成27年度は、機器の購入など実験環境を整えるとともに、ふたつの地域で高齢者を対象とした測定を実施した(地域①対象者22名、66.4±6.8歳;地域②対象者30名、72.5±5.6歳;合計52名)。調査項目は、歩行リズム、体力(握力、歩行速度、筋量他)、アンケート(基本チェックリスト他)とした。歩行リズムの評価は、歩行中のストライド時間の時系列データから算出したフラクタル指数(α)を使用し、自ら掛け声をする歩行としない歩行(通常歩行)のそれぞれを評価した。 現段階で分析が終了し、得られた知見は以下のとおりである。 1)αは年齢との間に有意な負の相関関係が認められた(r=-0.47 ; p=0.011)。また、通常歩行でαが低値の者では、自ら掛け声をしながら歩行することでαが有意に上昇(改善)した(p<0.001)(續田ら2016)。以上のことから、歩行が不安定な場合、掛け声が歩行リズムを安定させる可能性が示唆された。 2)αはステップ長との間に有意な正の相関関係が認められた(r=0.50 ; p=0.026)。また、通常歩行でαが高値の者は低値の者に比べ、ステップ長が有意に高値を示した(p<0.05)(續田ら2016)。したがって、歩行リズムの安定性にはステップ長が関与していると推察される。 3)大腿前部の超音波画像から筋組織厚筋(量的指標)と筋輝度(質的指標)を得て、αとの関連を検討した。αは筋輝度との間で有意な負の相関関係を認めた(r=-0.62; p=0.006)が筋組織厚とは有意な相関関係を認めなかった(續田ら、抄録登録済み)。筋肉量ではなく筋肉の質、すなわち良好な筋内組成が歩行リズムを安定させるうえで重要であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度の計画では、フレイルな高齢者および神経疾患患者それぞれ50名のデータ取得(歩行データおよびアンケート調査)を予定していた。これまでに地域在住高齢者52名のデータを取得したが、その多くが健康な高齢者であり、取得データのうちフレイル(プレフレイルも含む)に該当する者は15名であった。また、予定していた病院から研究協力の承諾が得られず、神経疾患患者を対象とした測定はできていない。次年度は神経疾患患者を中心に測定を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度も引き続きデータの取得と分析を行う。神経疾患患者の募集は、研究代表者が所属する大学の学術協定機関に依頼予定である。また、フレイルな高齢者も予定人数を目標にデータの蓄積を図る。今年度はフレイルな高齢者および神経疾患患者の実験を並行して実施するため、歩行データの解析に必要な物品を追加購入し、実験が円滑に進行するように努める。
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