研究実績の概要 |
昨年度はロックハートコレクション(Sir James Haldane Stewart Lockhart, 1858-1937)が二度にわたって購入されたことが明らかになり、本年度はその上でより詳細な購入経緯を明らかにした。本研究対象についての先行研究は林・コーニツキー両氏共著の『ケンブリッジ大学所蔵和漢古書総合目録』(1991)のみであるが、研究対象についての言及は一度目の購入にしておきながら、目録の中では二度目に購入されたものと混同し記載されている。 これまで本研究対象について知られた事実は断片的な記述のみであり、詳細は知られていなかった。その中、ロックハート卿生前の書簡や記録の類は未整理の状態でスコットランド国立図書館に保管されている。その中から本研究対象に直接関連するものを発見することができた。ロックハート卿の遺族とケンブリッジ大学三代目漢学教授のアーサー・クリストファー・モール(1873-1957)との間に交わされた書簡である。 それによるとロックハート没後にその約1200点の旧蔵書は二度にわたって売却された。一度目は大英博物館、Percival David卿(1892-1964)、ケンブリッジ大学図書館によってその大半が買収され、残りは1948年まで再び同館に買収されるまでは遺族のもとに保管されていた。前出目録にロックハート旧蔵と明記したのはすなわちこの1948年に購入されたものである。 以上に判明した事実については従来の学会発表・論文投稿に加え、ウェブ上での研究成果の公開も開始した。ケンブリッジ大学図書館の公式リポジトリであるCambridge Digital Libraryで研究対象を撮影したデジタル写真とともに研究成果をメタデータとして付与し、ウェブ上で公開した。
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