研究実績の概要 |
独自に設計・合成したπ電子系イオンペアを用い、適切な条件における集合化を行うことで、π電子系イオンの規則的な配列構造を基盤とした次元制御型集合体(結晶、ゲル、液晶中間相など)の創製を展開した。たとえば、会合型のイオンペア集合体に着目すると、ピロールβ位に芳香環を導入したジピロリルジケトンBF2錯体(π電子系アニオンレセプター)の合成を行い、結晶中において電荷積層型集合体の形成を明らかにした。また、ピロールβ位芳香環に長鎖アルコキシ基を導入したレセプターはイオンペア集合体からなる液晶相を発現した(Chem. Commun. 2017, 53, 3834)。ほかにも、ジピロリルピリミジンの合成にも成功し、溶液中における[1+1]型のアニオン会合挙動を明らかにし、さらに、結晶状態において電荷積層型集合体の形成を解明した(Org. Biomol. Chem. 2016, 14, 8035)。一方、非会合型の「真」のπ電子系イオンを基盤としたイオンペア集合体を展開した。とくに、+1価のπ電子系カチオンであるポルフィリン-AuIII錯体を基盤としたイオンペアの合成および対アニオン交換方法を確立することで、多様なイオンペア集合体の調製を開拓した。たとえば、π電子系カチオンに適切なアニオンを組み合わせることで、サブマイクロメーターサイズのファイバーからなる超分子ゲルの形成や、広い温度領域において電荷積層型集合体からなる液晶中間相を発現した(論文投稿準備中)。π電子系イオンペアの形成方法と集合化に関する研究を展開したことで、π電子系イオンペアを基盤とした多様な次元制御性ソフトマテリアルの創製が可能となった(総説:Chem. Commun. 2017, 53, 2894)。
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