本研究では、トライボ反応膜の摩擦特性と構造を対比しながら反応膜の低摩擦・耐摩耗性のメカニズムを解明することを目的とした。本年度に下記の様な成果を得た。 構築した高感度摩擦試験機を用い、添加剤由来の反応膜の摩擦特性を評価した。添加剤はモリブデンジチオカーバメート(MoDTC)、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、MoDTCとZnDTPの併用を用いた。トライボ反応膜自身の摩擦係数は表面形状に関わらず、膜の化学構造に依存することが分かった。耐久性について、ZnDTPが存在した場合は、膜が長時間にわたって耐摩耗性を持つことが確認された。さらに、AFMを用い、反応膜の生成過程を観察した。反応膜の成長速度は最初段階で速く、その後徐々に遅くなることが見られた。反応膜の成長に伴い、摩擦係数が減少したことが分かった。 環境負荷の少ない添加剤過塩基性カルシウムスルホネート(OBCS)由来のトライボ反応膜の摩擦特性も評価した。単独に添加した場合、最初は十分厚い反応膜が形成されたが、耐摩耗性が良くないことが分かった。トリクレジルホスフェート(TCP)と併用した場合、形成した反応膜が薄いにも関わらず、優れた耐摩耗性を得た。それについて、反応膜にCaOが多く検出されたことから、耐摩耗性は反応膜の化学構造に依存したことが考えられる。 以上の結果から、トライボロジー反応膜の摩擦特性は反応膜の化学構造に依存したことが分かった。このような反応膜をスラスト玉軸受の軌道面に形成させ、摩擦係数は反応膜がない場合と比べ、約50%減少したことが分かった。 構築した顕微FT-IRその場観察システムによって、低摩擦を実現するには、添加剤分子が金属表面との反応だけではなく、分子の配向も重要であったことが分かった。そこで、カルボン酸の会合体を合成し、添加剤をとして、基油に添加した場合は、摩擦係数は40%下がったことが見られた。
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