研究課題/領域番号 |
15H06750
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研究機関 | 関西外国語大学 |
研究代表者 |
姜 京守 関西外国語大学, 外国語学部, 准教授 (30757985)
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研究期間 (年度) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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キーワード | 統合マーケティングコミュニケーション(IMC) / 企業イメージ / ブランドイメージ / 知覚品質 / ブランド信頼 / ブランドロイヤルティ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、消費者観点から企業の統合マーケティングコミュニケーション(IMC)活動がブランド成果に及ぼす影響を解明することである。具体的には、「課題1.IMCやブランド信頼(brand trust)、そしてブランドロイヤルティ(brand loyalty)の意味とその構成概念の明確化」、「課題2.IMC活動がブランド信頼とブランドロイヤルティに及ぼす影響とそのメカニズムの解明」の2つの研究について行う。 平成27年度は課題1に関する研究を行った。具体的には、IMC概念を扱う研究群を概観し、その概念の適用範囲はどこまでなのか、また、その研究はどこまで進み、課題としているものは何かについて検討・整理した。広告及びマーケティング研究を軸に、消費者行動研究やコミュニケーション関連の研究を含め、幅広く文献レビューを行った。とりわけ、IMCやブランド信頼、ブランドロイヤルティなどの各構成概念の定義や構成次元、測定尺度、研究方法、研究結果などについて多面的に分析した。 また、以上の検討を踏まえて、各構成概念の多次元構造を整理し、本研究独自の研究モデルを考案した。そして、先行研究の検討から考案された研究モデルをより頑健なものにするため、関連分野のエキスパートを対象にインタビュー調査を実施した。こうした文献レビューやエキスパートインタビュー調査を通じて、企業のIMC活動がブランド成果へ至るまでのプロセスを示した概念モデルや測定尺度を明確にすることができた。 先行研究の考察は本研究の基盤となるため、初年度に行った意義は大きい。また、先行研究の考察から明らかになった知見をより客観性の高いものとするため、関連分野のエキスパートを対象としたインタビュー調査は重要な作業であった。こうした調査の成果については、平成28年度の国際ビジネスコミュニケーション学会(JBCA)や韓国ビジネスコミュニケーション学会(KABC)の全国大会において発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は全体で2年間の研究計画期間の初年度である。初年度は、来年度に実施予定の質問票を用いたサーベイ調査の準備期間と位置づけ、研究を進めてきた。具体的には、第1に、文献展望の深化と関連分野のエキスパートとのインタビュー調査を通じて、本研究の理論的位置づけや実証研究のための研究モデルを明らかにすることなど、サーベイ調査の円滑な実施に向けた準備を進めてきた。第2に、次年度におけるサーベイ調査を実施するための事前準備として、一般消費者を対象として配布する質問票の作成プロセスを進めてきた。このように、平成27年度は、研究プロジェクトの初年度に該当するため、本研究の理論的位置づけを明確すること、次年度実施予定のサーベイ調査の準備の2つに注力してきた。特に、本研究の理論的位置づけや研究モデルについては先行研究の考察やエキスパートインタビュー調査を通じてより明確化されたこともあり、次年度実施予定のサーベイ調査の準備期間としての計画は、おおむね達成されている。また、サーベイ調査の実施にあたっては、質問票の構成、標本抽出の方法に関する慎重な検討が今後より一層必要になるものと考えられるが、当初予定していた初年度の実施プロセスは、おおむね達成されたものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次に2年目は、提案された研究モデルに基づいて消費者を対象にサーベイを実施し、そこから得られたデータを分析し、仮説を検証する。その結果を踏まえて、本研究の学術的及び実務的なインプリケーションを議論して行く。さらに、本研究の限界を示しながら、今後の研究方向についても述べていきたい。具体的には、まず第1に、サーベイ調査で使用する質問票の構成については、初年度実施してきた手続きを引き続き継続的に実施することで、質問票の精度を高めていく。 調査については、調査会社に概要をすでに説明済みであるため、調査に問題はないと考えられる。一般性を高めるため幅広い年代を対象にする。サンプルは20代~60代の男女、計500サンプルを予定している。以上の調査で得たデータは、統計ソフトSPSS statisticsとAmosを用いて分析を行う。 第2に、次年度はデータの収集と分析が主な作業になるが、先行研究のレビューは継続的に行う。この点について、今後も持続的に実施することで、本研究の理論的・実践的示唆をより豊かなものにすることができると考える。また、可能な限り精緻な分析を行うためには妥当性の検討、統計手法の検討も継続的に行う必要がある。 なお、本研究では、当初、通信サービス市場の消費者を対象として調査の計画を予定していたが、初年度のエキスパートインタビュー調査を通じて、他のサービス業界の消費者を対象とした調査を実施することができる可能性も出てきた。そのため、基本的には、当初の計画通り通信サービス市場の消費者を対象として調査を実施する一方、状況に応じて研究資源に余力があると判断される場合に限り、研究の当初の計画から少し進展させて、他のサービス業界の消費者を対象とした調査を実施することを視野に入れて比較研究を進めていくことにしたいと考える。
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