本研究では、組織内におけるIMCプロセス活動とその受容性に関する実証的研究を行い、それらの因果関係の解明を試みた。具体的には、携帯電話やスマートフォンの利用者に対する調査を前提に、組織内におけるIMCプロセス活動がブランド成果にいかなる影響を与えるかについて独自の仮説モデル提起し、その検証を行った。分析と考察の結果を総括すると、次の4点に大きくまとめられる。(1)本研究で設定したIMCプロセス活動の3つの下位次元のうち、相互作用性(interactivity)と関係性(stakeholder relations)は、消費者のブランド信頼やブランドロイヤルティの下位次元に対して有意にプラスの影響を持つことが検証されている。すなわち、これは消費者が企業の実施するIMCのインタラクティブコミュニケーション活動とステークホルダーとの関係性活動に対してポジティブに認識すればするほど、ブランド信頼やブランドロイヤルティが高まるという結果を示している。さらに、(2)高められた好意性基盤のブランド信頼と専門性基盤のブランド信頼は、消費者の社会的ブランドロイヤルティと経済的ブランドロイヤルティの向上に寄与していることも確認された。その一方で、(3)ワンボイス・ワンルックを目指す戦略的一貫性戦略(strategic consistency)は、好意性基盤のブランド信頼と関係しておらず、またブランドロイヤルティの2つ下位次元に負の効果を示す側面も明らかとなった。(4)こうした結果をもとに本研究で仮定したIMCプロセス活動とブランドロイヤルティとの間におけるブランド信頼による媒介効果は、相互作用性と関係性の2次元に限定した場合、機能していることが確認され、本研究で提起した媒介モデルは部分的に支持された。これらの結果を踏まえ、本研究の理論的及び実践的含意が議論された。
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