研究課題
臨床検体のCGH法解析から得られたFGF9遺伝子やMAP3K10遺伝子・AKT2遺伝子の増幅について遺伝子強制発現株を作成したところ、FGF9とAKT2遺伝子についてはEGFR阻害剤に耐性化した。一方でMAP3K10遺伝子については複数の癌腫の細胞株で実験を行ったが感受性含め表現型には変化を認めなかった。特に顕著に耐性化したFGF9遺伝子強制発現細胞株はin vitroでもin vivoでもFGFR阻害剤によりEGFR阻害剤への耐性化が解除された。さらにFGF9遺伝子増幅について改めて新たなコホートの大腸癌手術検体を用いてその頻度を探索したところ、手術検体145例中8例(5.5%)で認め、KRAS野生型の大腸癌に多い傾向にあった(7/96, 7.3%)。また抗EGFR抗体を使用した別のコホートでも調べたところ、薬剤無効7例中FGF9遺伝子増幅を1例認め、他の耐性に関わるKRAS, NRAS, BRAF, PIK3CA遺伝子の変異とは排他的であったが、一方で著効15例中では1例も認めなかった。これらのことからKRAS野生型の大腸癌の中で、ある一定の頻度でFGF9がEGFR阻害剤への耐性に関わっており、そういった群についてはFGFR阻害剤を併用することが有効である可能性が示唆された。AKT2遺伝子強制発現株についてもin vitroではPI3K阻害剤を併用することで耐性化が解除された。さらにAKT2遺伝子が増幅しているPANC-1という膵癌細胞株でも同様にPI3K阻害剤を併用することでEGFR阻害剤への感受性が高まった。
2: おおむね順調に進展している
FGF9遺伝子についての実験はin vitro、in vivoともに予定以上に進展し、さらに臨床検体の解析についても当初の予定以上に解析することができた。MAP3K10遺伝子については期待したような結果が得られず、それ以上の解析は行っていないが、AKT2遺伝子についての実験はおおむね予定通りに進展した。薬剤耐性株の作成は濃度上昇に伴い死滅した細胞株も存在し、予定よりも若干遅れている。
大腸癌の臨床検体を用いてAKT2遺伝子増幅の頻度を調べる予定である。データベースではAKT2遺伝子は膵癌で比較的高頻度であることが報告されているため、今後膵癌でEGFR阻害剤を使用した針生検検体についてもその増幅や高発現を検討する予定である。耐性株については引き続き作成を継続し、機序の解明を目指す。薬剤濃度の上げ方を複数通り作成し死滅によるやり直しを避ける対応を行っていく予定である。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
Clinical Cancer Research
巻: 22 ページ: 3663-3671
10.1158/1078-0432.CCR-15-2093.
Molecular Carcinogenesis
巻: Epub ページ: Epub
10.1002/mc.22476