本研究は、鎌倉幕府の下で行われた九州支配について、従来の研究が注目してきた、a)大宰府機構、b)守護の果たした役割に厳密な検討を加え、その実態に迫ることを目指した。 上記の目的を達成するために、本年度は、①造宇佐宮役、②宇佐弥勒寺領に関する史料を網羅的に収集した上で、集めた史料の分析を進めた。 ①造宇佐宮役は、宇佐宮の式年造営時に九州を対象に一国平均に賦課・徴収された。従来は、鎌倉幕府による大宰府機構の掌握を示す事例として論じられてきた。そうした先行研究に見直しの必要があることを主張した研究報告を行い(2016年3月)、そこでの質疑応答で得られた意見を反映させて論文化した(なお、本論文については、平成29年度中に出版予定の著書に「鎌倉期造宇佐宮役の研究」と題して収録し、公開する)。 ②宇佐弥勒寺領については、関連史料を検出・読解しながら特に後白河院政期の状況をできるだけ詳細に復元することを試み、院政期~鎌倉期にかけての九州荘園の展開過程を跡づけていった。その成果は、本研究の期間中に公表することはできなかったが、今後、論文として公開することを目指して作業を続けたい。 なお、上記以外にも、本研究成果の一部を収録した著書を出版する準備を進めたほか、書評1本(『日本歴史』)・「2016年度の歴史学会 回顧と展望「三 社会・経済 中世前期」」(『史学雑誌』)を分担執筆した。また、九州方面(福岡県・長崎県・佐賀県)での現地調査も実施した。
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